「福祉らしく あたらしく」。そのキャッチコピーに込められた想いとは?
2026年5月24日(日)、札幌のエア・ウォーターの森を舞台に、福祉の祭典「WELLFES(ウェルフェス)2026」が開催されます。
一般社団法人fanfareとNPO法人あえりあの共催によって生まれたこのイベント。開催前の今、主催者の一般社団法人fanfare代表の伊藤真哉さんと、NPO法人あえりあ代表の高橋亜由美さんにその想いをたっぷりと語っていただきました。

急な連絡から始まった、ちょっと熱いコラボレーション
——なぜ、このタイミングでウェルフェスを開催しようと思われたのでしょうか?
伊藤さん: タイミングとしては、正直なところ「たまたま」という部分もあるんです(笑)。ただ、僕自身がずっと「福祉と社会がうまく混ざり合っていく、グラデーションを作っていきたい」という思いを持っていました。
今って、障害を「受け入れなきゃいけない」「多様性を認めなきゃいけない」みたいな、ゼロか100かの風潮が強いと感じているんです。でも世の中ってそんなにゼロか100かじゃなくて、グレーなゾーンがあってもいいんじゃないかと。理解するというより、グラデーションの中で調和が図れているような、そんな社会をつくっていきたいと思っていて。
3〜4年前から、そういった福祉と社会の接点をつくる活動をいろんな角度から続けてきたんですけど、「自分一人でやれる範囲にも限りがある」と思い始めたんですね。誰かと一緒に福祉の業界を盛り上げていきたい、って思った時に、真っ先に浮かんだのが亜由美さんの顔で。それで急に連絡して、「イベントやりたいから一緒にやろう」みたいな、すごく軽いノリでスタートした感じです。いろんな分野で福祉の活動をされている方がたくさんいらっしゃる中で、「この日は札幌の福祉の日だ」というくらいの熱量になる一日を作りたくて。相談の中で「もうフェスだよね」という話になって、今の企画へと進んでいきました。
高橋さん: 話をいただいた時は、本当に嬉しかったです。私もずっと「真哉さんと何か一緒にやれたら面白いな」と思っていたので。真哉さんのやっていることって、型にはまってなくて、ちょっと新しくて奇抜なんだけど、突き抜けすぎていないというか。今までの福祉も否定せず、でもちょっとだけ変わったこと・現代的なことをやっていく、そのバランス感がすごく好きです。
私自身も「ザ・医療、ザ・福祉、ザ・介護」からあまり離れすぎても良くないと思いつつ、NPO法人として新しいことにも挑戦し続けなければ、という意識がずっとあって。真哉さんとなら、今までの福祉も大切にしながら、何か新しいものをつくっていけると思ったんです。
——お二人の最初の出会いはどんなきっかけだったのでしょうか?
高橋さん: 初対面がいつだったか、実は二人とも覚えていないんです(笑)。Facebookでお互いの活動を見て知っていたのが先か、どこかの場でお顔を合わせたのが先かも曖昧で。去年あたりから急に話す機会が増えてきて、「真哉さんと何かできたら面白いな」と思い始めていたんです。実は一度、NPO法人あえりあが開催しているあえりあマルシェに一緒に出店できないか声をかけたこともあったんですが、日程が合わなくて実現できなくて。そういう経緯があった後の「ウェルフェスやろう」という声かけだったので、お話をいただいた時は本当に嬉しかったです。
伊藤さん: そんなに密に話したことがなかった中での急な誘いだったんですけど、なんか直感だったんですよね。「亜由美さんと一緒にやったら楽しいだろうな」っていう、それだけでした。
閉鎖的な業界に、風を吹かせたい
——お二人が感じている「福祉のもったいなさ」とはどんなところですか?
高橋さん: 医療も福祉も介護も、結構閉鎖的だなっていうのは常日頃から感じています。でも私自身も、病院で働いていた時には気づいていなかったんです。在宅や福祉で看護師をしたり、NPO法人を立ち上げて自分で活動するようになって初めて、「なんて閉鎖的な場所にいたんだろう」と気づいて。
FAXが当たり前だったり、いろんなツールがある中でなんか古めかしいことをずっとやってたりとか。担い手が楽しく働く・柔軟に働くっていうことへの意識もまだまだだなと感じていて。利用者さんたちの多様性が当たり前のこととして受け止められていく社会になっていく中で、現場で働く人たちの考え方もそれに合わせて柔軟になっていけているのかなっていうところはずっと思っていました。
情報発信の仕方という点でも、もったいなさを感じています。世の中から福祉や介護って「誰でもできる仕事」とか「給料が低い」とかのイメージで見られがちなところがあるんですけど、それって発信が上手じゃないから伝わっていかない部分も大きいと思うんです。だからこそ今回のウェルフェスも、ちゃんとデザイナーさんに入ってもらって、ロゴマークをつくって、見せ方をしっかりしようということを大切にしています。
伊藤さん: 就労支援の現場で長く働いていた中で感じたのは、福祉職の人って、福祉に対しては本当に熱いんです。でもそれ以外のことが意外と分からなくて、社会との間に隔たりを感じることが多いなということで。
僕は福祉以外の業界から入ってきたので、なおさらそのギャップを強く感じたんだと思います。支援者の限界って、その支援者が見えている世界と持っている情報の量で決まってしまうと思っていて。視野が広がることで、目の前の方への支援の幅も広がる。そのきっかけをつくることが重要だと思っています。
また、福祉に触れたことがないからこそ、どう関わっていいか分からなくて、なんとなく遠ざけてしまっているという人も多い。でも実際に関わってみると意外と普通で、一つひとつの場面に理由があることを知っていくうちに、障害のあるなしに関わらず、「人に興味を持てるかどうか」という話なんだと気づいていくんですよ。それって対人関係全般が楽になるし、自分ももっと楽に生きられるようにもなる。だからこそ、知ってもらうきっかけをつくることが、この業界から変えていける一番大事なことだと思っています。
ロゴに込めた「混ざらない自由」
——「福祉らしく あたらしく」というキャッチコピーは、どうやって生まれたんですか?
高橋さん: お互いで考えてきて、持ち寄ったんですよね。真哉さんが十個くらいアイデアを書き出してくれていて、私も「こんな感じのを考えていました」って出して。その中で「福祉らしく、あたらしく」という方向性が重なって。「福祉」は漢字で「あたらしく」はひらがなで、という形がなんとなく自然に決まりました。デザイナーさんにも入っていただいていたので、文字の見た目の印象も一緒に検討して。ひらがなにするか漢字にするかだけでも、受け取る印象がまったく違うんですよ。縦組みのデザインも完全にデザイナーさんの提案だったんですけど、あの縦の並びが独特の新しさを生んでいると思います。
——ロゴマークに込められた意味も教えていただけますか?
高橋さん: ロゴの丸が「混ざり合っているもの」と「混ざっていないもの」があって、それが実はすごく大事なんです。真哉さんが「グラデーションや混ざり合いもいいけど、混ざらないっていうのもあっていい」って言っていて、確かにな、と気づかされて。
今ってインクルーシブとか、みんなを混ぜたがる・理解させ合おうとする風潮があるけど、できないならできないでもあり。否定さえしなければ、理解できないもの同士が共存していてもいいんじゃないかって。よく見ると、寒色と暖色が重なっているところもあれば、そこから少し離れたところにちっちゃな丸がポツンといたりもする。混ざっていない存在もちゃんとそこにいる、という世界観をロゴに込めてもらいました。
当日はどんな一日? フェスの全貌
——5月24日、どんな一日になりそうですか?
伊藤さん: まず初年度として一番大切にしたいのは、今まさに現場で働いている人たちが「福祉っていいな」「自分たちのやっていること、やっぱり良かったな」「もっと頑張っていきたい」と思えるきっかけをつくること。そこが根っこにあります。「福祉最高だぜ」ってなってもらえるような一日にしたい、と亜由美さんと話してきました。
高橋さん: 具体的には、11時から17時まで、出展ブースや体験・ワークショップが通して開催されます。出展者さんは就労支援や福祉に関連するものづくりをしている方々ですが、ちょっと変わったことをやっているところをあえて選んでいるんです。例えば就労支援で他の企業さんとコラボしてものをつくって、お土産コーナーに並ぶようなものをつくっているとか。「こういうのもアリなんだ」「うちも工夫したらこれできるかも」と思って帰ってもらえたら嬉しいなという気持ちで選んでいます。
体験コーナーでは、耳の聞こえない空間での疑似体験や、目隠しをして相手の「気配」だけで斬り合う「気配斬り」のような視覚・聴覚障害の疑似体験もあります。頭で理解するのではなく、身体で感じてもらうことで、記憶に残るものになると思うんです。そういう体験が子どもの頃にあって、その子が大人になった時に社会が変わっていくといいな、という長い視点も持ちながら企画しています。
ステージイベントとしては、13時から従業員の約7割が障害者雇用という日本理化学工業株式会社さんによる基調講演。「キットパス」や「チョーク」などをつくっている会社さんで、障害のある人と共に働くことへの考え方や実践についてお話しいただきます。14時からは「知ってほしいな。私のこと。」というトークセッション。障害者の方や当事者ご家族にぶっちゃけトークをしていただく、NPO法人あえりあでこれまでも開催してきた企画です。そして15時から…
伊藤さん: ピッチイベント「EXCITE(エキサイト)」です。EXCITEという名前は「ワクワクする」という意味であり、EXample(実例)・Charm(魅力)・Idea / Impact(アイディア/影響)・innovaTE(革新・新しいものを取り入れる)の視点で審査をするのですが、それぞれの英語の頭文字にもなっています。福祉の現場だけじゃなく、この業界をワクワクさせてくれるような発表を聞いて、「自分たちにもできることがある」「こういう可能性があるんだ」と感じてもらえる時間にしたいんです。
事業アイデアでも実践事例でも、福祉に関わる内容であればジャンルは問いません。1組5分のピッチ形式で5組が発表します。僕自身が本当に楽しみにしていて、いろんな刺激を受けたくてワクワクしているところです!
「福祉を前面に出さない」が、二人の共鳴点
——共催ならではのお互いへの信頼感のようなものを感じます。共鳴した点はどんなところでしたか?
伊藤さん: 「福祉のことをやるんだけど、そんなに福祉を前面に出さない」「気づいたら自然と福祉に触れていた」という考え方が、きっと二人の一番の共通点だったと思っています。
亜由美さんがやっているあえりあマルシェも、一見ふつうのマルシェなんだけど、その中に福祉のつくったものが自然と並んでいて、ふらっと来た人が知らずに手に取っている。それって僕がずっとやりたかったことと同じで。声をかけたのはきっとそういう直感だったんだと思います。
高橋さん: fanfareさんで開催している「福祉バーナーズ」—焚き火を囲んで話す福祉職の方たち向けのコミュニティ—があるんですけど、このコンセプトがすごく好きで。福祉の人向けのイベントって、研修会・交流会・勉強会みたいな形になりがちじゃないですか。でも「福祉バーナーズ」は、そうじゃないところで緩くつながりながら、必要な時には結束する。間口が広くて、でも集まる人はエネルギーが高い。そういう場のつくり方って、真哉さんならではだなと感じていて。今回も協賛のお声がけを、ほぼ真哉さんが動いてくださっているんですけど、それってそのまま、一般企業と福祉が自然とつながっていく動きそのものだなと改めて感じています。
——お互い意見がぶつかることはないですか?
伊藤さん: ぶつかるというより、嫌なものは嫌ってお互いに言えているというか。最初のミーティングで「お互い妥協したものはつくりたくないから、言いたいことはちゃんと言おう」って約束したんですよ。それをあゆみさんがちゃんと守ってくれる。何か言われたからって嫌いになったりしないし、ちゃんと思っていることを言い合って、いいものをつくっていこうというすり合わせができていることが、僕の中ですごく安心感になっています。
高橋さん: お互いがジャストアイデアで「これどうだろう?」を出し合いながら、「これはできそう、これはちょっと難しそう」「今年はここまで、来年はこれを」みたいに振り分けていった感じで。妥協せず、でもピリピリもせず、という関係でやれているのは本当によかったなと思います。
来てほしい人へ——「福祉にウェルカム」な一日
——どんな方に来てほしいですか?
高橋さん: 福祉で働いている方はもちろんなんですけど、「ちょっと踏み出したいけど、職場の中で一人では勇気が出ない」という方の背中を押せるイベントになると思っています。あと、一般企業の方で「福祉とコラボしてみたいな」「関わってみたいな」という方にも来ていただけると、当日そこから新しい展開が生まれたりするといいなって思っています。
「みんなでたのしむ音楽会」のことも少し話させてください。ウェルフェス当日の午前中、先立って開催する音楽イベントがあるんですが、告知の段階で「障害のあるなしに関わらず参加できます」とは書かないようにしているんです。「障害があってもなくても楽しめます」と書くことが、かえってバリアになってしまうことがあるから。小さな子どもも声を出してしまうし、障害のある子も音を出してしまうかもしれない。医療的ケア児のご家族も、呼吸器のアラームを気にして行きにくいと感じることがある。そういうのは「お互い様だよね」という場でありたくて。一緒の太鼓を叩いて楽しんだ後に外に出たら、福祉のフェスが始まっている—そういう流れが生まれることで、普段福祉と接点のなかった方が「ちょっと気になる」と思ってくれたら嬉しいなと思っています。
伊藤さん: 福祉に何らかの興味や関心がある方、今まさに携わっている方のモチベーションをとにかく上げていける初年度にしたいと思っています。ふらっと来てもらって、その魅力に触れてもらえたら。
来てくれた人が「自分もやってみたい」と思ってくれたら、来年の運営メンバーになってくれるかもしれないし、参加してくれた人たちと一緒に、この企画を育てていくイベントになればいいなって思っています。「一緒につくっていく仲間」が集まってほしいですね。
最後に—それぞれのメッセージ

高橋さん: 「ウェルフェス」というイベント名を考えていた時、「ウェル」という言葉にいくつもの意味を重ねてみました。ウェルフェア(福祉)のウェル、ウェルビーイングのウェル、そして福祉へウェルカムというウェル。まさにそれを体現するような場をつくりたいと思っています。福祉で働く人が楽しめる場所であり、そこで働く人・利用する人のウェルビーイングが高まる場所であり、ちょっとでも関心を持ってくれた人が「ウェルカム」と感じられる場所。そういうイベントになれば嬉しいです。
伊藤さん: ウェルフェスは、これからつくっていくイベントです。参加してくれた方も含めて、一緒に育てていくものだと思っています。関わってもらうことで、一緒にこの企画を育てていく——そういう気持ちで仲間が集まってくれたら最高です。「一緒につくりましょう」って、それだけです。
そして……いずれはエスコンフィールドで花火を上げましょう(笑)。夢はでっかく!
WELFES ウェルフェス2026
🗓 2026年5月24日(日)11:00〜17:00
📍 エア・ウォーターの森(札幌)
Instagram:@well_fes_
主催
- 一般社団法人fanfare @fanfare.hokkaidou https://www.fanfare-sapporo.com/
- NPO法人あえりあ @saponte_aeria https://aeria-hp.com/
お問い合わせ
- NPO法人あえりあ:contact@aeria-npo.org
- 一般社団法人fanfare:fanfare615@gmail.com
取材者
名久井里美(なくいさとみ):理学療法士兼キャリアコンサルタント・ライター

