2021年に「医療的ケア児支援法」が施行され、行政、保育園、幼稚園、学校では、医療的ケア児を受け入れられる体制づくりが進められています。
在宅で暮らす医療的ケア児者は増えており、インクルーシブな社会のためには、大人も子どもも医療的ケア児者との接点を多くもつことも重要です。
その接点づくりとして、NPO法人あえりあと北海道医療的ケア児者家族の会Team Dosancoのコラボで、札幌芸術の森で開催されている「STV創立65周年記念
チームラボ 学ぶ!未来の遊園地と、花と共に生きる動物たち」で一緒にあそぶ機会を企画しました。
開催の目的
医療的ケア児は年々増えており、在宅で暮らす医療的ケア児者も年々増えています。
札幌でも、医療的ケア児を含む重症心身障害児を対象とした重症児デイサービスが増えています。
2021年に「医療的ケア児支援法」が施行され、インクルーシブ教育の施策が進められていますが、医療・福祉・介護の有資格者のなかでも医療的ケア児と触れ合ったことがない人も多く、大人も子どもも“医療的ケア児”を知らない、会ったことがないという人が多いのが現状です。
そこで、支援する、支援してもらうという立場ではなく、「一緒にあそぶ」という機会をつくることにしました。
また、医療的ケア児のきょうだいは、家族のみでの外出では我慢することも多く、他の大人や一緒に遊ぶ子がいると、思う存分遊ぶことができる機会にもなります。
準備
札幌芸術の森への問い合わせ
バギーでの利用
医療的ケア児はバギーを使用するため、バギーでも楽しむことができるか、福祉車両を会場の近くに停めることができるかを電話で問い合わせました。
会場内はバリアフリーではあるが、演出上、床が平らではない箇所や土足禁止の場所もあるため、バギーで入れない箇所が一部あるが利用できるとのことです。
第一駐車場に福祉車両用の駐車スペースはあるが、予約は不可能との返答でした。
また、第一駐車場が満車の場合は他の駐車場に誘導されることもあること、会場近くでバギーの子を降ろして遠くの駐車場に停めに行くことも可能だと説明されましたが、バギーの子を置き去りにして車を停めにいくことなどできないのではと質問しましたが、どうしようもないとの返答でした。
(実際は、事前問い合わせとは異なっていたので、後述します)
無料チケット対象の障害児が入院した場合、他の家族はその場でお金を払えば入場できるのか
障害者手帳を持っている人と付き添い1名が無料で入場することができます。
土日とお盆期間など、一部の日程では、事前にチケットを購入していないと入場できません(それ以外は、当日支払いで入場できます)。
医療的ケア児が参加するイベントだったため、障害者手帳の子が体調不良や入院などで参加できなくなった場合の対応を問い合わせました。
母親・障害児・きょうだい児で参加の場合、無料チケット2名+子どもチケット1名で購入することになりますが、障害児が入院したので母親ときょうだい児で入場しようとした場合、母親の分のチケットは当日支払えば入場できるものではなく、追加で事前購入しなければいけないとのことでした。
もしもチケットが売り切れていた場合、すでに入場可能人数にカウントされている母親は、お金を払うことで入場できないのかを再度確認しましたが、できませんとの返答でした。
この場合、きょうだい児が保護者不在になってしまいます。
障害児者の家族のことを配慮された対応をしていただけると嬉しいですね。
団体登録
「団体登録をしますか?」と聞かれました。
チケット購入方法は団体登録をしてもしなくても同じですが、同じ時間帯に他の団体が登録することができなくなるそうです。
こちらは、登録をお願いして良かったです。
障害者手帳を持っている子達も複数人いるということを伝えていたためか、入場の列に並ばずに、団体として入場することができました。
参加者募集
今回は、初の試みであったため、NPO法人あえりあは「さぽんて」登録者からGoogleフォームで申し込みを受け付けてチケットをまとめて購入し、北海道医療的ケア児者家族の会Team Dosancoはメンバーにお知らせしつつ各自チケット申し込み制にしました(前述したように、体調変化で参加できなくなった時の対応が煩雑化するため)。
※「さぽんて」とは、NPO法人あえりあが運営する、医療・福祉・介護の有資格者と、サポートが必要な人・法人が、つながり合い助け合うプラットフォームです。( https://saponte.com/lp )
前日にリマインドメール
集合時間・集合場所・急な連絡先などを、お申し込み者にメールをしました。
当日
駐車場の案内が事前情報と異なる
一番会場に近く、福祉車両用の駐車スペースがある第一駐車場に車を停めるのがよいと、芸術の森の方から返答をもらっていたため、入場時間の15分前を集合時間とし、軽く挨拶と顔合わせをしてから、会場へ向かう予定でした。
しかし!
参加者によって、案内された駐車場がバラバラでした。
福祉車両用の駐車スペースは第一駐車場だと説明を受けていましたが、実際は、会場のすぐ横にも福祉車両用の駐車スペースがあり、そちらに案内された方が数名。
事前の説明の通りに第一駐車場に案内された方と、満車のため第三駐車場に案内されて、道の悪い中バギーを押して長距離移動しなければいけなくなった方もいました。
これから参加される方は、駐車場案内係の方に、福祉車両なので会場横に停めたいということを主張した方が良いです。
入場
入場の列に並ばずに、横の小道から通路に移動し、団体として入場することができました。
駐車場で集合できなかったため、入場前に、NPO法人あえりあ代表理事高橋亜由美と、北海道医療的ケア児者家族の会Team Dosanco代表小山内淳子さんが、挨拶をしました。
※「さぽんて」に登録している看護師も複数名参加していますが、今回のイベントには医師からの指示書を取得していないため、医療的ケアは家族で実施することを周知しています。
入場時に、受付でチケットのQRコードを読み込んでもらって、いざ会場内へ!
会場内
急に真っ暗になります。
暗いところが怖い子にとっては、いきなり恐怖・不安があるかもしれません。
少し進むと、すぐに、きれいなデジタルアートの空間になります。
次の空間では、丘と谷のようになっているため、バギーから抱っこに変更してデジタルアートの中に突入!
下り坂の場所に座って楽しむ子も。
座ったところから立ち上がる際は、看護師や他の子の母親が児の臀部を支えて持ち上げる介助をするなど、お互いに協力します。
滑り台は、抱っこをして滑ることができます。
土足禁止のスペースなので、土足ではないけれど医療的ケア児の靴も脱ぐようにスタッフから声をかけられましたので、バギーから抱き上げる前に、あらかじめ子どもの靴は脱いだ方が良いです。
抱っこで階段を登って滑りおりてくるため、兄弟2人を母親が往復するのも大変なので、看護師が弟くんと一緒に滑りました。
滑る前はしかめっ面をしていましたが、滑るとパッと表情が明るくなり、気に入ったようです。
ボールのコーナーは、バギーで入ることができませんでした。
(スタッフさんが「いいですよ」と言ってくれたので入ったら、他のスタッフさんからバギーでは入らないように注意された方がいました。その場にいるスタッフさんによって対応が違うのかもしれないです。)
通路も狭く、バギーが2台以上になる場合は、縦列で端に寄せる必要がありました。
最後のお部屋では、来場者が描いた絵を読み込んで、壁に投影されています。
目を輝かせながら楽しんでいました。
複数の家族でのお出かけだからこそできる交流
一人っ子の医療的ケア児のもとに、他の医療的ケア児のきょうだい君が話しかけにきて、頭を優しくなでなで。
入場前は、間に合わなかった方もいたので、最後に参加者全員で集合写真。
ユニバーサルトイレ
大きめな介助用ベッドがあります。
大きなバギーの場合は、個室の外にバギーを置いて抱っこで個室に入ることになるケースもあるかもしれませんが、バギーが小さめであれば、バギーごと個室に入ることができます。
参加者の声
医療的ケア児家族
- 息子は普段、はじめましての人とは喋らないけど、息子のそばにいてくれた看護師さんとはお話ししていました。色々な方と知り合えるこのような機会は、子ども達にとっても必要ですよね。素敵な出会いです。
- 父親が仕事で一緒に参加できないため迷っていましたが、看護師が「私が◯◯くんと遊ぶから一緒に行こう!」と誘ってくれて、息子達も楽しかったようです。
- 母1人で子供2人連れて行くにはかなりの勇気がなきゃ行かなかったと思うので、誰かが近くにいてくれるだけで安心ですし、きょうだい児とも遊べたので良い経験になりました!
- 水族館・動物園・博物館や観光地などで一緒に遊ぶのも、楽しそう。最初に自己紹介をする時間があれば、きょうだい児も支援者さんともっと遊べると思う。
医療職
- なにかお手伝いできるかな?という思いで参加して、子ども達とご家族の笑顔をたくさんいただけました。
- 医療的ケア児やご家族と関わる機会が普段ないので、良い経験になりました。
- とても楽しかったです。
反省点
- 事前に問い合わせていた情報と実際が異なることもあり、入場前の集合に間に合えなかった方は、参加者を把握できなかった。そのため、入場して人がたくさんいる中で、誰が一緒に参加している看護師なのかがわからず、補助を頼みにくい場面もあった。
- 予想していた以上に人が多く、会場も広くはないため、会話を楽しむことは難しかった。接点にはなったが交流にまでは至れず、参加者からも、自己紹介してゆっくりお話しできる時間もあると良いとの意見もあった。次回以降の企画では、交流の要素を増やすことも検討する。
- 医療的ケア児者、障害者などが、観光地やイベント会場に足を運んだ際に、どんなことが障害になるのかを伝えていく必要があると感じた。同時に、今回のように複数人で参加すると解決できることもあり、助け合える存在の必要性も感じた。今後のイベントも、活動報告レポートを公開して情報発信する。
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