医療的ケア児は、美容室に行くことのハードルが高く、自宅で母親や父親が切っているケースが多いのです。
「バギーに乗ったまま切ってもらえるかな」
「途中で吸引しなければいけなくなると、迷惑かけてしまうかな」
「感覚過敏があるから大丈夫かな」
「切っている間、じっとしていられるかな」
「シャンプー台に乗れないんじゃないか」
などなど、不安要素が多いからです。
今回は、医療的ケア児との接点のない美容師さんに、美容室で切ってもらいました!
初の美容室へ!
ご協力いただいたのは、大通りにある「Unite by little 」の店長YUTOさん。NPO法人あえりあ代表理事の高橋がお世話になっている美容師さんです。
髪を切ってもらいながら、NPO法人あえりあの活動や医療的ケア児のことをお話しさせてもらうことも多く、「美容室で髪を切る」という経験をしたことがない子たちが多いので、トライできないかと相談させてもらったところ、初めての試みを、快く引き受けてくださりました。
ありがとうございます。
店内へ
大通りの地下駐車場に車(福祉車両)を停め、天気も良い日だったので、テレビ塔前で写真を撮ったりしながら、美容室へ。
ビルの入り口は、段差なく入ることができました。
エレベーター前はやや狭めですが、エレベーターにはバギーと大人2人乗っても余裕があります。
髪を切る準備
首が座っておらず、自分で座位を保持することもできないため、美容室の椅子に移乗することは難しいので、自分のバギーのままで切ってもらいます。
みなさんも、髪の毛が服の中に入らないように、タオルを肩にかけ、その上からカットクロスをかけますよね。
バギーは頭元まで背もたれがあるので、カットクロスを2枚使って、バギーごと覆いました。
(以前、訪問理美容の方が、このようにしているのを見たことがあり、真似してみました。)
カット
ツーブロックにしたいとの希望で、バリカンで刈りつつ、髪を切りつつ。
顔が左を向きがちなので、左側を刈ったり切ったりする時は、頭を支えます。
後頭部のカットは、バギーの背もたれがあり、気管切開をしているため首を前屈することが難しく、美容師さんが少し大変そうでした。
「こんな感じにしたい」という写真を見せて、ツーブロックの刈り上げ部分にバリアートを!
シャンプー台に移動する際は、髪の毛が中に入らないようにカットクロスを外します。
そのまま抱っこすると、抱っこした大人が髪の毛まみれになるので、頭にタオルを巻いて、抱っこする大人に切った髪の毛がつかないようにしてみました。
シャンプー
シャンプー台に座ってから背もたれを倒すと、大勢を崩したり、良い位置にポジショニングできない可能性が高いので、あらかじめ椅子を倒した状態(ベッドのような状態)にしてから、抱っこで移動して、乗ることにしました。
そのまま乗ると、首を乗せる部分が肩の高さよりも高く、首が後屈してしまい気管切開のカニューレの誤抜去の危険もあるため、肩あたりにタオルを置き(上の写真の高さでは高すぎたので、乗ってから調整しました)、なるべく肩と頭の高さが同じくらいになるようにしました。
頭の下にも、タオルを丸めて置いて、後屈しないように頭を洗ってもらいました。
美容師さんに頭を洗ってもらったのは、初めてです。
ドライヤーとスタイリング
頭にタオルを巻いた状態で、抱っこしてバギーに戻ります。
その際、濡れた髪の毛でバギーが濡れてしまうので、あらかじめバギーにタオルを敷いておきました。
普段からドライヤーは使っているので、びっくりしたり緊張したりせずに行えました。
美容室でスムーズに髪を切ってもらうには
事前に情報共有
美容師さんは、障害児のことを知らない方が多いと思います。
感覚過敏のある子は頭を触られたりクシが頭皮の当たるのを嫌がる場合があることや、じっとしていられない子、ドライヤーの音が苦手な子、途中で吸引などのケアが必要になる子など、いろんな子がいるということは、お伝えさせてもらっていました。
(今回、一緒に美容室に行った医療的ケア児は、前述したような苦手が比較的少ない子です。)
バギーのイメージもつかないと思い、写真を見てもらい、バギーに乗ったまま切りたいということや、シャンプー台をフラットにしてから乗りたいということは、事前に高橋と美容師さんで調整しました。
一緒に試行錯誤
全員が初めてのことなので、
「どうやったら髪の毛が入らないかな」
「こうしてみたら、どうでしょう?」
「頭を支えてもらえますか?」
「ここにクッション入れてみましょうか」
などなど、みんなで試行錯誤しながら、髪を切ってもらうことができました。
入店から退店まで約1時間と、思っていた以上にスムーズに進みました。
お互いに声をかけあうのが大事ですね。
参加者の声
母親
初めて美容室に出向き、ヘアカットしていただきました。
座位もとれず首も座っていないので、普段は2〜3ヶ月毎に自宅のリビング床に新聞紙を引き、子どもを寝かせて横を向かせて右に左にと身体をゴロゴロ転がってもらいながら母がバリカンを使って髪を切っています。
30分前後で髪を切り終えると同時に、自宅のお風呂に直行しさっぱり仕上がる流れです。
今回は美容室でしたので、そのままバギーに乗ったまま切ったのですが、イメージ通りカッコよく仕上げていただけて嬉しいです!
シャンプー台に乗れるのか?頭が支えられるのか?気管切開部に負担がかからないのか?心配はありましたが、意外とすんなり乗ることが出来て良かったです。
本人は心のキンチョーも筋緊張もそれ程無く、最後には笑顔で終われたので良かったです。
散髪後は周りの方々から「カッコいいねー!」と好評です。
また美容室行けたらいいねと本人と話しています。
ありがとうございました♪