医療的ケア児の旅行準備【ホテルと飛行機の調整】

医療的ケア児との旅行では、事前に調整が必要なことが多くあります。
旅行に慣れている医療的ケア児Kちゃんのママが、ホテルや航空会社と電話をする際に同席させていただき、事前に調整している内容をまとめました。

こちらの情報が全てではないですが、参考になる情報が満載です。

ホテル

医療的ケア児がいるためリクエストしたいことがあると理由を伝え、調整します。
ホテルによって、対応してもらえることと困難なことがあります。
全部を調整できるとは限りませんので、お子さんの状態に合わせて、「絶対必要」と「妥協できる」を整理してから電話をすることをオススメします。

医療機器の事前受け取り

人工呼吸器を置く台、加温加湿器、回路の予備、酸素ボンベ、酸素濃縮器、エアマットなどを、業者さんやメーカーさんに現地レンタルする場合は、ホテルに受け取ってもらえるとベストです。

  • 事前に、業者さんが持っていくので、受け取りをお願いしたい。(業者さんの名前・連絡先、具体的に何を受け取ってもらうかも伝える。業者さんとは、エア・ウォーターなど、旅行時の医療機器の調整をしてもらう業者さん)
  • 受け取ったものは、部屋に入れておいてほしい。
  • 酸素ボンベはクローゼットに入れておいてもらいたい。(クローゼットのない部屋の場合は、バギーで部屋に入るときに邪魔にならず、日に当たらない場所に保管しておいてほしいことを伝える)
人工呼吸器の台は事前にホテルの部屋に届けてもらいました。

人工呼吸器の台は事前にホテルの部屋に届けてもらいました。

荷物を送る

ケア物品も含めると大量の荷物になるため、事前にホテルに荷物を送る場合は、送り状を書く前にホテルに確認しましょう。

  • ホテルに荷物を送りたいことを伝える
  • 送り状の書き方(宛名や日付指定など)をホテルに確認する

貸し出し物品

貸し出し可能物品は、ホテルのホームページなどで確認し、貸し出しを希望するものを調整します。
個数が限られているので早めに調整しましょう。

あると便利なもの

  • 加湿器(部屋が乾燥して痰が硬くなることがあるため)
  • 延長コード
  • バスタオル(何枚必要かを伝える。例えば、唾液の多い子の場合ベッドに寝る際に敷いたり、お風呂後に多めに使いたい場合や、ホテルでの入浴が難しくタオルで拭きたい場合など、あらかじめ多めにタオルを用意しておいてもらうと便利。)

室内物品の配置

  • ベッドを2台寄せるなどが必要な場合は、お伝えする。(ホテルによって、もしくは部屋によって、不可能な場合もある)

部屋の位置

バギーでの移動になるので、もし可能であればエレベーターに近い部屋だと嬉しいということをお伝えすると、対応してもらえることもあります。

レストランとの調整

レストランを利用する場合は、レストランとの調整も引き続き可能かを聞いて、転送してもらうと、1回の電話で調整できます。
※今回は、ディズニーのホテル宿泊ですが、ディズニーランドやディズニーシーのレストランについても、同様に転送してもらっていました。

  • アレルギーがある場合は品目(ディズニーは、低アレルゲンプレートがあります。)
  • ミキサー食やペースト食の用意のあるレストランは、内容や注入可能な形態かどうかを確認
  • ミキサーではなく、離乳食(0歳児用のパウチを温めて出すかたちになる)という場合もある(離乳食は粒が残っており注入には不向き。離乳食をミキサーにかけたり、市販されている高齢者介護用のペースト食をお湯で伸ばして注入することも要検討)
  • カロリーと量を聞いておくと良い
  • 白湯とスプーンを用意ほしい(硬さの調整やシリンジに吸う際に使う)
  • レストランのミキサーが使い回しだとアレルギー食材の影響がある場合、持参のミキサーを使っても良いか確認する。(電源の確保が難しいとの返答の場合もあるので、充電式のミキサーを持っていると便利。充電式のミキサーは、飛行機の手荷物持ち込みNGの可能性が高いので、預ける荷物に入れると安心。)
  • 持参の栄養剤や離乳食を持参する場合は、温めてもらうことは可能か確認。難しい場合は、お湯をもらうと、湯煎することができる

レストランなどに入らず、出先での注入となる場合は、サーモスなど保温できるものでお湯を持っていくと、湯煎して栄養剤やジュースなどを注入できます。

充電式のミキサーを持参

充電式のミキサーを持参

飛行機

機内の広さ、事前調整や当日にお手伝いしていただくスタッフ対応、機体の大きさによっては畳まずにバギーを乗せることが難しいケースもあることを考えると、LCCではなく、JALかANAを利用することをおすすめします。
JAL「お手伝いを希望されるお客さま」ページ
ANA「お手伝いが必要なお客様」ページ

※旅行会社のパックは、個別の融通がきかない部分が生じることがあるので、要注意です。飛行機もホテルも自己手配をしたほうが、細かく調整することができます。

予約

航空券は、電話で予約、もしくはネットで予約をして支払い完了前に電話をします。
午前中は電話がつながりにくいです。

飛行機の時間

  • 注入などケアの時間も考慮して、飛行機の時間を検討。
  • 医療機器やバッテリーを使う機器を持ち込む場合は、一般の搭乗手続きの流れとは異なり「お手伝いが必要な方」の窓口にて、事前申請と機器が一致しているかを確認する手続きがあります。窓口が混み合っている場合もあるので、搭乗時間の1時間半〜2時間前には空港に到着できるように家を出発することも考慮する。
機内持ち込み物品の確認

機内持ち込み物品の確認

座席指定

電話で席を指定する際に、医療的ケア児であることを伝えて調整します。

  • 離発着時は座席に座る必要があるため、自力での座位保持が難しい場合は、ベルト・クッション・ブランケットを借りて座席に体幹部を固定する必要がある。その場合、後ろに座席のない席や、同行する者のうちの1人が真後ろの席(体幹部のベルトにより、テーブルを使えない)に座るなど、席の調整が必要。
  • 力が入ったり発作などで不意に手が広がる子は、通路側ではない席に医療的ケア児が座る(通路手が飛び出て接触の可能性があるため)

重症心身障害児で座位保持が難しく、ベルトやクッションなどを活用して離発着時のみ座席に座った際の工夫を、「重症心身障害児(医療的ケア児)沖縄旅行with看護師」で紹介しています。

ストレッチャーでの搭乗が必要な場合は、座席に着席することが不可能でありストレッチャーを使用する必要があるとの医師の診断書が必要です。
また、ストレッチャー料金がかかることや、医師・看護師もしくは医師が認めた者の同乗が条件となります。
JALの場合
ANAの場合

座席の指定などは、そのまま予約できる時とプライオリティゲストセンターに引き継ぎされる時があります。
電話口の方の経験値によって、スムーズに予約・調整ができる場合と多少時間がかかる場合もあります。

プライオリティーゲストセンターで電話調整

症状、機内への持ち込み物品、お手伝いの内容などの確認があります。

医療機器はバッテリーも確認

機内持ち込みが可能なものは、法律で決められているため、毎回確認されます。
あらかじめリストにする、もしくは、物がその場にある状態で電話をすると良いです。

  • 医療機器やバッテリーのメーカー名、製品名、製品番号
  • 機内で使用しないが持ち込みたいもの(夜間のみ使用の人工呼吸器や、預け荷物だと破損が心配で機内に持ち込みたい機器など)も伝える

バギー・車椅子

  • バギータイプの車椅子であることを伝える(電動かどうかも確認されます)
  • バギーの大きさ重さ
  • バギーは折りたたみ可能か(折りたたみをすると飛行機から降りた際に組み立てが大変な場合は、無理に折り畳まずに「折りたたみはできない」と伝え、リクライニングやティルトの調整など可能な範囲で小さくする。)
  • バギーのまま保安検査場を通り、搭乗口もしくは機体の横までバギーで移動したい場合は、その旨を伝える。(空港内用・機内用の車椅子に乗り換えが可能か確認されますが、座位保持が難しい場合は、搭乗口もしくは機体の横までバギーのまま移動することをおすすめします。)
  • 飛行機を降りた際、手荷物のターンテーブルではなく機体の横でバギーに乗りたいことを伝える。

飛行機の機種によって、折り畳まずに載せられる大きさが異なるそうです。
また、上記を事前にお伝えしていても、当日の搭乗手続きの際に情報が抜けていることもあるため、「事前に伝えたから大丈夫」と思わず、再度確認しましょう。

機体の横までバギーで行き、抱っこで機内へ

機体の横までバギーで行き、抱っこで機内へ

抱っこで機内に入ることが難しい場合は、機内用の車椅子・リクライニング車椅子の一度乗る必要があります。その様子も「重症心身障害児(医療的ケア児)沖縄旅行with看護師」で紹介しています。

酸素ボンベ

普段から医療機器を担当してもらっている業者さんに手配をして持参することも、航空会社で借りる(有料)こともできます。
後者の場合は機内のみでの使用となることや、貸出品の付属品が使い慣れていないタイプである可能性もあり、旅行中のことを考慮すると前者がおすすめです。

機内に持ち込む酸素ボンベは、仕様証明書も必要となります。
業者さんに酸素ボンベを手配してもらう場合は、業者さんにお願いすると作成してくれる場合もあります。

酸素ボンベについて
https://www.jal.co.jp/jp/ja/jalpri/pre-application/oxygen.html

また、飛行機に乗る際の搭乗手続きの窓口で、医療機器の確認とともに、提出した仕様確認書と照らし合わせて、ボトル番号と再検査期限の確認があります。

借りたいもの

個数に限りがあるため、飛行機の予約と共に、下記も調整します。
※航空会社によって借りられるものの形状が異なります。
JALの場合
ANAの場合

  • ベルトの種類と本数
  • ブランケット

ベストのタイプは、サイズが合わなかったり、障害児は嫌がったりする可能性もあります。
体格に合わせてベルトで固定しつつ、枕やブランケットで調整することもできます。

ベルトで体幹を固定し、クッションやブランケットで調整

ベルトで体幹を固定し、クッションやブランケットで調整

ベルトで体幹を固定し、クッションやブランケットで調整

ベルトで体幹を固定し、クッションやブランケットで調整

また、チャイルドシートは、年齢・身長・体重などや、搭乗予定の機材によって、借りることができるかどうかが左右されます。座席への取り付けは、客室乗務員が手伝ってくれますが、不慣れな場合もあるそうです。

乗り継ぎがある場合

他の乗客全員が降りたのちに飛行機を降り、次の飛行機には優先搭乗で他の乗客が乗る前に座席に付かなければいけないため、通常の乗り継ぎの時間感覚で飛行機を予約すると、慌てることになってしまいます。
また、羽田空港など大きな空港では、乗り換えの飛行機の搭乗口までの距離が遠いと、移動が大変です。
上記を考慮していただきたい旨を、電話でお伝えし、当日搭乗する際にも確認すると良いです。

当日のこと

当日、搭乗前にケアが必要な場合は、事前に調整しておきます。

  • 吸入など電源を使用したケアを行いたい場合は、事前に、コンセントの位置を確認します。通常の車椅子の大きさを想定した返答があるかもしれないため、バギーでも利用可能なスペースであるか確認しましょう。

搭乗日が近くなったら、調整の電話がくる

確認をお願いしていたことや、調整が必要になったことは、電話連絡があり再度調整を行います。

  • リクエストしたことが、できるorできない
  • できない場合は代替え案を調整

事前に提出

医師と調整

主治医に、飛行機での旅行が可能か、もしもの時の対応をどうすると良いかなども、相談しておきましょう。

  • 飛行機は気圧変化や慣れない体勢での移動となるため、呼吸状態が変化しやすい。看護師が同行しない旅行であれば、対応を確認しておく(看護師が同行する場合も、訪問診療時に同席してもらって一緒に確認すると安心)
  • ケアの時間も普段通りにはいかないことがあるので、時間が大きくずれない方が良いこと(例えば内服の時間など)はあるか確認する
  • 味見をしてみたり、ジュースなどを注入してあげたいなど、現地のものを食べさせてあげたい場合は、NGなことや注意しなければいけないことがあるか確認する
  • 旅行先で病院にかかる時のために、紹介状を書いてもらって持ち歩く

業者さんに調整

普段使っている業社さん(エア・ウォーターなど)に、航空会社に提出する書類の依頼や、ホテルに手配してもらう物品の調整を行います。

  • 旅行支援サービス申込書
    医師に書いてもらってエア・ウォーターに提出
    →酸素ボンベのシリアルナンバーをもらって、航空会社に伝える or エア・ウォーターが直接航空会社にFAXしておいてくれる
旅行支援サービス申込書

旅行支援サービス申込書

  • ホテルに事前に届けてもらいたい物品と、ホテル名や担当者の伝達
  • 持参する酸素ボンベの受け取り
  • トラブル時に対応してもらえるように、旅行先の支店の情報をもらう

まとめ

重症心身障害児や医療的ケア児などの飛行機での旅行は、このように事前準備がたくさんあり、準備で疲弊してしまい旅行に一歩踏み出せないお話しもよく耳にします。
しかし、一度やってみると「できた!」「◯◯にも行きたい!」と、帰り道で次の旅行を考えるご家族もいらっしゃいます。

今回ご協力いただいた医療的ケア児Kちゃん&ママに同行したディズニー旅行の様子は、次の記事でご紹介します。