ナースのキャリア図鑑 vol.3

3回目となった「ナースのキャリア図鑑」は、2025年5月10日に開催しました。
看護師が活躍できる場をあまり知らないからこそ、キャリアに悩んだり、「こうじゃなきゃいけない」という考えに捉われてしまう看護師も多くいます。

学生や若い世代に、自分らしいキャリアの作り方や、楽しく働くコツを知ってもらいたいと思い、年に2回、この「ナースのキャリア図鑑」を開催しています。

ナースのキャリア図鑑 vol.3

トークライブ

MC紹介

高橋亜由美 / 看護師・保健師

大学病院ICUで5年勤務後、派遣登録して短期や単発バイト、透析クリニック、訪問看護、人工呼吸器特化の病院を経て、現在は、重症心身障害児・医療的ケア児のデイサービスで週4の常勤勤務をしつつ、2021年にNPO法人あえりあを立ち上げた。

ちむ / 看護師

総合病院の急性期病棟が合わず1年で退職し、沖縄に移住して看護師をしたり、一度看護師を辞めてアパレルで働いたのちに、現在は訪問看護師をしている。
YouTube「ちむちゃんねる」

ゲスト

成田真唯 / 看護師・助産師

NICU看護師を2年経験し、現在は助産師1年目。夢は助産院を開くこと!

原田亮太

病棟看護師をしたのちに、北海道看護専門学校で専任教員をしている。

高橋亜由美 & ちむ

これまでの経歴

ちむ:1年目は急性期の総合病院で働きましたが、あまりにも辛すぎて辞めて、沖縄に行き、回復期のリハビリ病院で勤務しました。
その頃にYouTube「ちむチャンネル」も始め、3年目にはまた別の病院に転職しました。
その後北海道へ戻り、看護師経験は丸3年もありませんでしたが、ずっとやってみたかった訪問看護にチャレンジし、すごく楽しいと思いました。
ただ、「このまま看護師で一生終わるのは嫌だな」と思い、元々興味のあったアパレルもやってみようと8ヶ月ほど働いてみましたが、「看護師の自分も好きだったな」ということに気づきました。もう一度、訪問看護をやっています。

高橋:大学卒業後は大学病院のICUへ入職。5年働いてから一旦羽を伸ばそうと思い、半年ぐらい派遣バイトでデイサービス、老健、大学の臨時講師と、色々なことを経験。
全く違うことをやってみようかなとも思いましたが、結局看護師の仕事ばかり探していて、やっぱり看護師をやりたいんだなと気付きました。透析クリニック8ヶ月、訪問看護1年、人工呼吸器特化の病院で4年働いて、今は重症心身障害児や医療的ケア児のデイサービスで週4の常勤で働いています。
2021年に自分でもNPO法人あえりあを立ち上げ、地域の有資格者が有償ボランティアができるプラットフォーム「さぽんて」の運営をしつつ、介護予防教室やイベントを開いたりしています。
雇用もされてる、看護師もしているし、自分でも法人を立ち上げてと、複数の顔を持っています(笑)

転職を考える時のマインド

高橋:人によってはブレーキを踏んだり、足踏みしたりすると思いますが、様々な分野にチャレンジしてきたちむちゃんは、何を重視していますか?

ちむ:自分が後悔しないかどうかです。
やらずに後悔するより、やってみて後悔した方がよっぽどいいなということが、マイルールです。
色々と選択肢はあると思いますが、どっちの道を選んでも間違いではなく、どっちの方が今の自分が楽かなとか、どっちがワクワクするかなと考えた時に、転職した方が、より自由に働けるなと思ったから、今までの転職をしてきました。

高橋:私もやってみたいことをやってきたタイプかも。
一般病棟は逆に経験がないんです。
どこへ転職するにしても、「大学病院のICUを5年経験している=基礎がある」と見てもらえるのは、強みになっていると感じます。

なぜ転職多いのか、面接で聞かれる

ちむ:絶対に聞かれます(笑)
正直に話しますね。
自分の至らない所や、人間関係で悩んだことなども話しますが、ポジティブに伝えます。
「こういう経験がありましたが、こういうことがしたくて、ここを受けに来ました」という感じです。

高橋:転職回数が多いとマイナスな印象になると言われますが、自分も相手も腑に落ちる理由があると、「色んな経験してきてるんだな」と、経験の幅に変わりますよね。
逃げ癖のような感じで「嫌だから辞める」を繰り返すと、「またそうなのかな」と思われてしまうかもしれませんが、ポジティブに伝えることでネガティブに取られたことはないですね。
そして、学生の時って、就職したらずっとその分野、その病院で働き続けるのかなと思うかもしれませんが、全くそんなことないですよね。分野も変わるし、価値観も変わるから。

大事にしていること、皆さんに伝えたいこと

ちむ:YouTubeやSNSで発信していて、本当はこれをやってみたいけど親が反対する、パートナーが反対するなど、周囲の反対や、ここでやめたら就職に困るんじゃないかといった相談が多いです。
私も過去そういう悩みがあったので共感できますが、転職を繰り返したり、看護師以外の経験をして思ったことは、周りにどう見られるかではなく、自分がやりたいと思うことを突き進んでいけば、道は拓けてくるということです。
どの選択肢を選んでも、失敗の道はなく、自分が正解だったと思える道を自分で作っていくものだからです。

高橋:私は、働きながら色々なことをやってきたタイプです。
今も、週4の常勤で勤務しながらNPO法人あえりあの活動をしていますが、夜勤ありのフルタイムで働いていた時も、ライティングなど違うこともしていました。
勤務以外に他の仕事もしていると、休み希望を取りたいときに、融通をきかせてもらえる人間になるためには、いてもらわなきゃ困る人にならなければいけないし、仕事を頼んだ時に期待以上のものを返してくれると思われる人にならないと、ただのわがままな人間になってしまいますよね。
働いている場で「求められることをしっかりやる」を大前提に、「自分のやりたいこともやる」ということには、すごく気を付けています。
イベントやマルシェを開催すると、職場の人が来てくれたりお手伝いしてくれたりします。
勤務先で「仕事しないのに自分の事ばっかりやってる」と思われてしまう人間だったら、そうはできないでしょう。

ちむ:そういうことに気を付けているからこそ、いろんな人から応援されるし、イベントを企画しても良い人が集まってくれるんでしょうね。

高橋:いい人ばかり集まってくれますよね。
だからこそ、皆も自分の活動の場を広げられる場所を作りたいと思っています。
色々な場でお力をお貸し頂けたらと思います。

成田真唯さん(看護師・助産師)

これまでの経歴

総合病院の産婦人科で助産師1年目として働いています。
その前に看護師として2年間NICUで働きました。
高校は普通の商業高校で、たまたま今日ここのお店の店長さんが高校の同級生でした(笑)

看護職に興味を持ったきっかけ

高校時代に、友達に誘われて行った「看護の日」の看護体験がきっかけです。
バスケをしていたので、体育の先生や理学療法士を考えていました。
看護体験で食事介助をさせてもらい、話すことが容易ではない高齢者が、最後に「ありがとう」って言ってくれたことに感動して、「看護師も良いかも」と思いました。

助産師を目指したきっかけ

海外の支援に興味があり、海外で看護師として働くことを考えていましたが、3年生の母性看護で海外のお産事情を知り、お母さんと赤ちゃんが出産を期に亡くなることが多いと知りました。
生まれてきた赤ちゃんの人生を考えると、これからという時に、お母さんも赤ちゃんも幸せなはずなのに、命がなくなるのは悲しいと思い、助産師を目指しました。
通っていた大学の1年課程の大学院は落ちてしまい、他大学の2年課程の大学院に進学しました。

挫折を経験

実は、助産師の国家試験に落ちてしまい、人生のどん底を味わいました。
就職予定だった病院に連絡したところ、「看護師として、ぜひ」と言ってもらったので、まずは看護師としてNICUで働きました。
翌年に助産師の国家試験には合格しましたが、もう一年看護師として経験を積み、今年の春から産婦人科に配属が変わり、助産師として勤務しています。

将来の目標

札幌で助産院を開きたいです。
自然と都会がほどよく調和している札幌が好きだから。
助産課程に進むまで、病院で産むのが当たり前だと思っていました。
助産院に泊まり込みでの実習を経験した際に、妊娠期から助産師が伴走し、お母さんのちょっとした悩みも聞くことができ、不安が軽減していく様子をみて、私もお産のできる助産院をやりたいなと思うようになりました。
2年課程の大学院だからこそ、長期間の助産院実習があったことで、夢が深まりました。

これまでの経験を通して得られたこと

もともと希望していた大学院には進学できず、学費も6倍になりましたが、お金に換えられない良い経験ができました。
助産師の国家試験に受かるまでの看護師の経験も、今の自分にとってプラスになっています。
院試に落ちて第二希望の大学院に進学したり、助産師の国試に落ちて看護師として働く期間があったりと、見方によっては挫折だと思われたり、当時は自分自身でも挫折だと思っていたことが、すべて現在の自分に繋がっています

商業高校に通っていたことも、人並みのパソコンができるようになり、看護師になったので、レポートや日誌の記録などが書けるようになりました。

NICUの看護師経験では、赤ちゃんが生まれてすぐに処置が必要で母子分離したあとに、初めての面会で、嬉しい気持ちや悲しい気持ち、色々な感情が出ているお母さんに寄り添ったサポートの大切さを知りました。

助産師の楽しさややりがい

助産師の楽しさはたくさんありますが、私はお産が好きなので、出産の喜びを一緒に分かち合えるのが助産師の特権だと思います。

私も一緒に感動して泣き出しそうになることもあります。
お母さんが、生まれた我が子を抱っこして涙を流している姿はすごく感動します。
妊娠期からのお母さんとの信頼関係ができた状態で出産を迎え、生まれた子が大きくなっても気軽に頼れる継続的な関わりを持てる助産師になりたいです。
助産師の語源は「女性と共に(with woman)」という意味です。
赤ちゃんのこと、思春期や生理のこと、性教育、不妊治療、更年期など、女性にずっと関わっている仕事ということが、すごく素敵だなと思います。

みなさんに伝えたいこと

私はキャリアを語れるほどの経験値はないのですが、どんな経験も決して無駄ではないということを伝えたいです。
皆さんも今、目の前にある色々なことをポジティブに捉えて、将来に活かしていってほしいです。

原田亮太さん(看護師・保健師)

専門学校卒業→大学に編入

専門学校卒業後に、大学に編入して、高橋さんと同期になりました。
大学に編入した時には看護師資格をもっていた(専門学校卒業時に、看護師免許取得)ので、授業のない時に病院で仕事をしていました。
土曜日には、夜勤をしていましたね。
編入生は授業が少ないないので、キャンパスでジンギスカンをしたり、キャンパスライフを楽しんでいました(笑)

これまでの経歴

大学卒業後は、循環器外科に配属されましたが、上司との折り合いが悪く1年で配置転換になり、精神科で3年勤務しました。
そこでのキャリアを活かして、札幌市内の専門学校で、精神科の専任教員として看護学生に教えています。
看護師の資格を取って、今年で19年目になるのですが、臨床経験は6年しかなく、半分以上基礎教育に携わっています。

元々看護師を目指してたわけではなく、高校の先生になりたかったんです。
野球を教えて、甲子園に出てるんだろうなと思っていましたが、キャリアチェンジをして看護師の資格を取り、それでも教育に携わりたいと思い、養護教諭のライセンスも取得しました。

精神看護の楽しいところ

精神科の患者さんは、見えないものが見えたり、聞こえないことが聞こえたり、辛くなったり色んな症状がありますが、症状に関しては治療をすればきちんとすれば良くなります。
生活に障害が残る人が大半なので、すごく微力ではありますけど、手助けができるところかな。
治ることはないので、彼ら彼女らの長い人生の一部しか関われないけれども、少しでも生活がしやすくなるように支えられるところは、精神科の一番面白いところですね。
精神科を経験する看護師は少ないけど、とことんハマっちゃうと精神科以外行けないっていう人が多いのも現実かな。

教員は、どんな仕事?

教員歴は13年目です。
基本的には、月曜日から金曜日まで実習指導や、学校の内で授業をしています。
実習先との会議があったり、戴帽式(ナースキャップのセレモニー)、卒業式、説明会、そういった企画運営を担ってます。

新卒での就職における最近の傾向

学生が、働きたいと志願する病院は忙しい病院が多いです。
急性期、ICU、脳外科、心臓血管外科に行きたいと言う学生は、すごく多いと感じます。
その反面、精神科や訪問看護をやりたいと言う学生も、最近は多くなってます。
10年前とは、明らかに変わってきますね。

僕らより年齢の高い教員もいるので、そういった先生に学生直接相談行ってしまうと、「精神科なんかやめなさい」「あなたに急性期は無理」と言う先生もいるけれども、言われるのがわかっているから私に相談に来るので、「いいと思うよ、受けてみたら」と言うようにしてます。

高齢化している中で、病院で長期入院するのではなく地域で生活してもらおうという国の方針もあるので、我々教員も、最近の医療の流れ、法律の変化などの情報をキャッチしていかないとならないと思います。

学生時代・看護師時代の経験を活かした教育

精神科の実習が印象に残っていて、実習と勤務経験がすごく繋がっています。
学生に伝える時も、教科書をなぞるだけではなく、自分の経験を話すようにしています。
失敗ばかりで、患者さんを怒らせたこともありますし、状態の悪い患者さんに飛び蹴りをされて骨折した経験もあります(笑)
今となっては「あの時、きっとこんな対応ができるとよかったかな」ということがわかるし、全部糧になっています。

養護教諭の免許を取った上で、看護の教員を選んだのはなぜ?

待遇面です(笑)
自分の希望していた野球を教えることはできなくなりますが、看護師として身につけてきたものもあるので、それを還元できるんだったらと考えて看護の教員を選びました。

学生さんや若い世代へメッセージ

学生さんは、今のうちにいっぱい失敗してほしい
学生のうちにしかできない失敗もあると思うし、臨床へ出るとどうしても責任がついて回っちゃうので、学生のうちにできる失敗はなるべく多くしてほしい。
先生方に怒られることも多分あると思います。
なぜ怒られたのかは必ず後々気が付くので、1回怒られたとしても、めげないでほしいですね。

教育に興味があるっていう方がいらっしゃるのであれば、楽しいですよ。
忙しいけど、やりがいはあります。
臨床を離れても看護に携わることができるので、これをキャリアの一つとして考えてもらってもいいんじゃないかなと思います。

交流会

スイーツとドリンクをいただきながらの交流タイム。

参加者の声

トークライブ

  • 過去の失敗も今の自分の糧になっていること、自分ごととしても捉えられるお話でした。
  • 色々な立場からの看護という存在を見れてとても楽しかったです!
  • 私も過去に教員を目指していたところもあり、将来教育の分野に携わることにも興味が湧いてきました。
  • 地域で働く助産師として、いつか、助産院や助産師の仕事について学生さんに向けて、私もお話してみたいです。
  • 興味深い貴重なテーマでとても楽しかったです。

交流会

  • さまざまなキャリア、学生とお話しする機会もなかなかないので非常に貴重な会でした。
  • 今までの経緯や複業している方のお話も聞けて充実していました。
  • 病院に限らずいろいろな場で自分のやりたいことに挑戦している先輩にとても刺激を受けました!そしてわたしが地域でやりたいと思っていたことと、同じような思いを持っている仲間に出会えたのもとても嬉しかったです。
  • わたしも学生の時にこのイベントに参加したらすごく視野が広がっただろうなぁと妄想してしまいました。素敵なイベントの企画をありがとうございました!
  • 今まで接点をもつ事がなかった看護職や学生の話を聞くことができ、新たな発見がありました。看護職の働き方や働く場の多様性を改めて実感できました。

Special Thanks

会場として使わせていただいたお洒落なカフェは、森香珈琲さん。
もか訪問看護ステーションを運営されている株式会社モカ様が経営しているカフェです。
とても雰囲気が良く、落ち着くカフェですので、ぜひ、皆様も足を運んでみてください♪
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