市立の小中学校に通う肢体不自由等がある生徒に対し、教室移動・トイレ・食事などの介助を行う「介助アシスタント」に関するzoomセミナー2回目を2025年12月23日に開催しました。
当日の様子を記事に起こしたものです。
「さぽんてzoomセミナー」介助アシスタントとして宿泊学習に同行
今回は、実際に一泊二日の宿泊学習に同行したさぽメン(サポートする有資格メンバー)からの報告と、法人登録をしている札幌市教育委員会学びの支援担当課の職員から制度の説明がありました。
学校教育と医療・福祉・介護職との間にはまだ境目がありますが、介助アシスタント経験者が増えて多職種連携が進めば、児童生徒の活動の場を広げる一助になるのではないか…そんな願いをもって「介助アシスタント」の活動紹介をしています。
介助アシスタントとは
(札幌市教育委員会学びの支援担当課 工藤さん)
「学びのサポーター活用事業」制度の中の「介助アシスタント」です。
通常学級や特別支援級に在籍している肢体不自由のあるお子さんに対して、教室移動などのお手伝いをいただきます。
今年度からは、学級の中でちょっと落ち着かなくて活動がなかなか進まないお子さんや、食べるときに嚥下の問題があるお子さんなど、対象となるお子さんの幅を広げているところです。
介助アシスタントは有償ボランティアなので、1時間1,050円の謝金が出ます。
社会保険や雇用保険の加入はなく、多くの方に支えられているのが現状です。
「さぽんて」で介助アシスタントを募集
(工藤)「さぽんて」を活用して、2名に介助アシスタントとして宿泊研修に入っていただき、日常生活をみんなと同じように送ることは難しいかもしれないけれども、周りの子と一緒に活動できることが増えるという大きな成果がありました。
今回の宿泊研修では、対象のお子さんも喜んで大変想い出に残る経験となりました。
お二人が「どうすればみんなと一緒に活動できるか」をよく考えてくださり、学校とも情報共有しながらやっていただけたお陰だと思います。
(司会:高橋)
「さぽんて」に登録していない方で「介助アシスタントやりたいな」という方は、札幌市のホームページから直接申請することもできます。
有資格者がいた方がよい事例では、教育委員会さんが「さぽんて」のリクエスト掲示板に投稿し、手を挙げてくれた方と詳細を調整して、同行してもらうという流れです。
お子さんの障害の度合いも様々で、資格がない方でもお手伝い出来るものから、身体的な介助が必要で宿泊も伴うため有資格者の方が安心な事例まで幅が広いので、打ち合わせをしながら、また来年度も進めていきたいと思っています。
同行してくれた“さぽメン”
(吉見さん)
介護福祉士で、普段は障害福祉の在宅支援、主に小児の在宅ケアをしています。
朝のモーニングケアから学校送り出しまでや、夕方帰って来たらお風呂に入れたり、時に療育活動で一緒に遊んだり、移動支援事業で一緒にお出掛けしたりといった仕事をしています。
(佐藤さん)
理学療法士として、リハビリの仕事をしています。
訪問で主に高齢者の方のリハビリに関わっています。
以前、発達に特性のある中学生も担当していて、通常級で支援が必要な子に学校や周りの友達はどんな風に関わっているのかを知ることで自分のサポートの仕方も変わるのではないかという気持ちがあり、参加することを決意しました。
なぜ宿泊研修の同行にチャレンジを?
(佐藤)よくインクルーシブ教育と言われるが、現場がどんな風にインクルーシブな活動をしているのか全くわからない状況でした。
僕の担当していたお子さんが通常学級で個別的な支援を受けられずに苦しい思いをし、特性が強化されて引きこもりになってしまった経過があったので、小学校の早い段階からどんな関わりをしていくと特性のある子たちも合理的な配慮を得ながら学校の中で生活していけるのかを考えたいと思い、チャレンジしました。
(吉見)私は仕事で出会った、事故で障害を負った中途障害の子(地域の中学校に通学)がきっかけです。
在宅では私たちが支援しているけれど、学校での生活がどうなっているのか知りたいと思いました。
飛び込んでみよう、身をもって体験すれば何か分かるんじゃないか、と思い切って挙手しました。
(高橋)きっと同じように日々支援している子たちが「学校でどうしてるのだろう?」ということは、感じているところではないでしょうか。
実体験として学校現場での経験をもつことは、私たち医療職としてもすごくいい機会になるのではないか、とお二人の話を聞きながら思いました。
宿泊学習当日の様子
(吉見)学校からバスに乗り、バスの中でレク(クイズ)にも同じ温度感で参加していました。
キャンプファイヤーをしたり、森の中を歩いたり、炊事をしたり、大きな声で「いただきますの歌」を歌ったり、全部子どもたちと一緒にしました。
(佐藤)キャンプファイヤーの時には、電気を消して星空を見るのですが、顔を上げられない子だったので手伝うなど、その子がみんなと同じように出来るよう可能な限り介助しました。
森の中は泥道山道だったので、安全を確保するのに僕自身がドキドキハラハラしながらやっていました。
バスに乗る時の工夫
(佐藤)学校の先生に札幌市内の観光バス事情を聞くと、昇降式のバスは少なく、当日近くにならないとどんなバスになるか分からず、実際に来たのは普通の観光バスでした。
前側から乗って、通路は一人通れるくらいのスペースだったので、担架でその子を運びました。
担架の幅がその間口と同じか足りないかくらいだったので、どうやって移動するか事前に少しイメージして練習もしましたが、介助アシスタントは二人いないと確実に出来ない案件でした。
(高橋)バスの前に敷物を敷き、担架を敷いてその上にお子さんに車いすから降りて寝てもらい、アシスタント二人が運ぶ形ですね。
観光バスなので運転席横のカーブした階段を上がり、安全を保ちながら二人の力で座席まで行き、最後は担架から座席に座らせる…という。
事前のインタビューで「理学療法士さんと一緒だった意義がすごくあった」と吉見さんが話していました。
自分たちの体の工夫をしながら安定して安全に相手を動かすのは理学療法士と作業療法士が長けているので、専門性が発揮できて嬉しい事例ですね。
滝野すずらん公園でのサポート
(吉見)事前に地図を渡されていましたが、森の中で迷いました。
私たちのグループには先生が付いていなかったので、「ゴールで待ってるよ」という感じでした。
子どもたちは当然気持ちや体力の波もあり、疲れたら足は止まるし、「早くして」と子どもならではの遠慮のないやり取りもありました。
途中お昼ご飯を食べる場ではちょっとゆったりした時間があり、トイレ介助にも入りました。
途中で車いすに付ける『JINRIKI』が壊れるアクシデントもあり、介助アシスタントが二人いたからこそ対応できた、一人だったらすごく不安だったな、と思います。
(佐藤)グループ活動だったので子どもたちが「通常の道だと行けないからこっちの道行った方がいいかな」と、その子を配慮しながら悩み進む臨機応変な対応も見れました。
結果的に迷いましたけれど、オリエンテーリングならではのドキドキ感を味わえました。
前日雨が降っていたので、ぬかるみとか車いすが大丈夫か心配でしたが、その辺は先生たちも森の状況を確認してくれました。
(高橋)体力勝負なところもあり、滝野に行かれる方は体力を使うことは前提でいた方がいいかなと思います。
炊事やキャンプファイヤー
(佐藤)その子は料理が得意で、家でもお母さんと包丁を使って切ったりしているようで、料理の仕方を理解しているので、しっかり指示を出せます。
「こういう切り方をしたほうがいい」「この順序でやったほうがいい」と。
得意な部分を生かして隣の女の子に伝えながらチームプレーができていたので、障害の有無ではなく、その子の得意を発揮する場が見られてすごくよかったです。
医療職ならではの「足浴」の実践
(佐藤)みんなと同じことをしたいはずなのに、お風呂に入れない(事前に、入らなくて良いという合意があった)のが可愛そうだなと、まず単純に思いました。
大浴場に行って入れてあげようかとも思いましたが、一人介助だと難しいので、足を温めてあげたいと思いました。
物があるか下調べしていなかったので、浴場に走って行ってお湯を汲んできました。
(高橋)私たち医療福祉介護職の立場だと足浴は頭に浮かぶけれど、学校の先生は足浴をする発想が無いかもしれないので、これは私たちならではの発想でサポートできた部分ではないでしょうか。
夜間と朝の過ごし方
(佐藤)僕は先生方と同じ部屋でした。
無線で、本人、先生、介助アシスタントが繋がっていて、必要な時に呼んでもらって駆けつけるという感じでした。
常に夜その子の隣にいる訳ではなく、その子たちは大部屋で楽しく騒いでいました。
(高橋)次の朝は、起きてから介助をしつつ、朝の身支度とかそういうところからのお手伝いですか?
(吉見)朝の身支度はほとんど無く、顔を拭いたり歯を磨いたり自立している子なので出来るところは自分でやってもらおうと、特に大きな介助はしませんでした。
美術館の見学・課題
(吉見)天気が荒れてみぞれが降っていたので、バスから美術館に入るまでの短い距離でもすごく大変でした。
足元も滑りますし、気を付けながら行った記憶があります。
彫刻家のご自宅がそのまま美術館になっているので、階段も多く、先生の力も借りて車いすごと持ち上げました。
みんなと同じように見たいものを時間をかけてじっくり課題の絵を描き、活動内容としては良かったかなと思います。
介助アシスタントを経験して
(佐藤)僕が介助アシスタントとして一番気を付けたことは「いかに介助しないか」に徹することです。
前回の「さぽんてzoomセミナー」で、「学びのサポーター」と「介助アシスタント」の定義を聞いていたので、教育的支援は先生方であり、介助アシスタントはいかに黒子に徹するかと、下手に手を出し過ぎるのは教育にも良くないと考えていました。
二日間の中で、少し元気な子たちから「遅いな」みたいに言われてしまったり、ちょっといじられてしまったり、本人も悔しい思いをしたのですが、それこそ教育の部分なんだろうなと思ったのでその場から離れるようにしていました。
ちょっと苦しい部分ではありましたが、一番意識して勉強になったところです。
(高橋)私自身も医療的ケアのある子の学校の付き添いを4年間やっていた経験があるので、本来子どもたちしかいない場面に大人が登場するというのは普通ではないことなので、いかに存在を消すかというのは難しいと思いながらやっていたのを思い出しました。
(吉見)私が意識していたのは、普段いない大人が2人居て2クラスで子どもの数が少ないので目立つため、いかに馴染むかというのを意識していました。
本人だけではなく周囲を取り巻く子、同じ班のメンバーだけではなくクラスや隣のクラスの子にも自然に話し掛けると、情報もすごく入ってきました。いかに馴染むかを意識しました。
教育委員会の視点での振り返り
(工藤)お二人から貴重なお話をいただいて、私たち札幌市の教育が今目指しているところが正に感じられました。
障害があろうとなかろうとどの子も良いところや自分の強み、特性を伸ばしながらお互い認め合い支え合えるような学校づくりをすることが目標です。
お子さんによって小学生と中学生とでは学ぶ環境が違ったり「近くに来ないで」という子も中にはいたりします。
その子がどうしてほしいかを前提として、介助に必要なことをしっかりと学校や私たち教育委員会が伝えていくことも、今後の介助アシスタント依頼に必要になってくると考えています。
介助アシスタントの皆さんには、お子さんの立場やその時の気持ちなど、子ども本人の声を聴くというところを前提として関わっていただけると、すごくありがたいなと思います。
(高橋)身体的な介助やサポートという面では私たちは専門職ですが、教育の場においては素人なので、もし困ったことや相談事があった際は、「さぽんて」を通じて介助アシスタントに手を挙げた方はチャット機能で相談してください。
一人で抱えようとせずに、相談しながら行っていただけたらなと思います。
(工藤)自分がやらなきゃと責任を感じていただくのは大事な側面ではあるのですが、教育活動は学校が主体として行うものですので、判断に迷う時には必ず教師の方に声を掛けていただいて、「今こういう状況なんだけれども、どうしたらいいだろうか?」とご相談いただきながら進めていけたらありがたいなと思います。
(高橋)医療福祉介護の人たちは、介助し過ぎてしまうところがあります。
何でもやってあげてしまいそうになる部分があるので、本人ができることは伸ばして、できないことをどうやって一緒にやろうかと考えてもらえると嬉しいなと思います。
次はあなたも!
(工藤)本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。「来年度修学旅行でも介助できたら」というお話もお聞きしていますので、ご協力いただけたらなと思っております。
また、介助アシスタントをやってみたいという気持ちのある方はご登録いただいて、不安な部分や不明なことがありましたら、学びの支援担当課の工藤にご連絡いただければと思います。
(佐藤)子どもにとって人生に何回かしかないような貴重な体験に、一緒に参加して共有することができたのが、一番の学びでした。
人は次の目標があればちょっと頑張れるので、「次また修学旅行に行くんだったら日々どういう事を自分で出来るようになっていなきゃいけないよね」と教育的視点ももって最後にその子と話しました。
僕達だけが出来ても継続できないという思いもあるので、皆さんも経験してもらえれば、この楽しさや達成感を共有できるのではないかなと思います。
ぐったりと寝込むくらいに疲労困憊でしたけど、やりがいが非常にありますので、いい経験かなと思います。
(吉見)飛び込んでみて、宿泊日が近付くにつれて「本当に大丈夫かな?」と不安に陥りましたが、髙橋さんが「さぽんて」で大事にしていると言っていた「お互いがgiver」というのは間違いないなと感じました。
不安もあったし、疲労感もありました。
でも、これで終わりという時にすごい寂しさに襲われて、また会いたいな、と思いました。
お互いがgiverどころかもらってばっかりだと思いました。
興味があって実際に挙手するのに不安を抱いてる方が多いと思いますが、間違いないのでやってみてください。
本当に得るものの方が多いので、体が元気なうちに一日でも早く活動してみてほしいと思います。
(高橋)今後も続けていくためにも、二人のうち一人が経験者、一人が未経験者のようなペアにして、宿泊研修や修学旅行に同行できる介助アシスタントを増やしていく工夫を、教育委員会さんとも話しています。
学校での経験をもった人が医療福祉介護の現場でも仕事を続けていくということが、互いにあまり見えていないボーダーを馴染ませていくという事に繋がっていくのではないかと考えています。
興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひチャレンジしてみてください。
今日はご参加ありがとうございました。
「さぽんて」とは
医学の進歩や高齢化によって、疾患や障害と共に地域に暮らす方も多い一方で、保険制度内でのサービスのみでは満たしきれないニーズも多く、今後も増えることが予想されています。
この社会課題を解決するべく、NPO法人あえりあが2021年7月に札幌市でリリースしたのが、医療・福祉・介護の有資格者と、サポートが必要な人が、つながり合い助け合うプラットフォーム「さぽんて」です。

登録制で、“リクエスト掲示板”に、いつ、どこで、どんなことを、いくらくらいでお願いしたいのかを書き込み、サポートできる有資格者が自ら挙手して有償ボランティアを実施できる仕組みです。

リクさぽ
・サポートをリクエストする人。
・障害児者・疾患やご高齢によりサポートを要する方とその家族 (WEBサービスであるため、ご本人が操作困難である場合は、ご家族によるご登録・ご利用も可能です)
・プラットフォーム利用料として、1,100円/月
(お得キャンペーン中で220円/月!)
※対象地域:札幌市内のみ
さぽメン
・サポートするメンバー
・看護師・保健師・助産師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・社会福祉士・介護福祉士
・有償ボランティア
医療・福祉・介護関連の施設
・スポットのリクエストを掲示板に書き込み、募集することができます。
・プラットフォーム利用料は、さぽんて料金表をご覧ください。
・リクエスト内容は、スポット依頼に限らず、イベントのお手伝い(写真係やブログ記事のライティングなども)、施設内研修の講師、レクリエーションのプログラム考案など、直接的な現場の業務以外も可能。
・人材採用に至った場合も、手数料はいただきません。
人材採用において、ミスマッチを減らすことが、雇用主・有資格者の双方にとってメリットになると考えています。
医療・福祉・介護は、誰もがいつか必要になるもの
みなさんと一緒に、医療・福祉・介護の制度の隙間になってしまっているニーズに対し、有資格者が有償ボランティアで助け合うことのできる仕組みを広げていきたいです。
制度内サービス、地域のボランティア、町内会や運動サロン、そして「さぽんて」のような有資格者の有償ボランティアなど、地域住民が選択肢を多くもち、必要な時に必要なものをチョイスできることが、これからの高齢社会ではますます必要となります。
主に「さぽんて」の運営資金として、個人でのマンスリーサポーター(月1,000円~)や、CSRやSDGsの活動としてのご支援や協賛なども、募集しています。
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