【後編】「制度のすきまで、人と人がつながることで支え合う」NPO法人あえりあ代表・高橋亜由美さんインタビュー

前編では、高橋亜由美さんが「さぽんて」を立ち上げるまでの歩みをお伝えしました。後編では、「さぽんて」の具体的な仕組みや現在の状況、そしてどんな方に使ってほしいかについて伺います。

——改めて、「さぽんて」とはどんなサービスか教えてください。

医療・福祉・介護の資格を持っている人と、サポートが必要な個人や福祉介護系の法人が、つながり合って助け合いができる有償ボランティアのプラットフォームです。昔は近所の中でそういう助け合いが自然に成り立っていましたよね。「困ったときはあそこのお姉さんが子どもを預かってくれる」みたいな。今はそういう関係が薄れていたり、逆に少し距離のある人の方が頼みやすいということもある。「さぽんて」はオンライン上で繋がりつつ、実際に足を運べる人たちがリアルでサポートする、オンラインとオフラインのハイブリッド型の昔ながらの町内会のような仕組みです。

——有資格者に限定しているのはなぜですか?

介助経験のある専門職が来てくれるというだけで、頼む側は安心して任せられますよね。専門職だからこそ共通言語で伝わることもある。そこが、無資格者のボランティア団体との一番の違いだと思っています。

——「有償ボランティア」という形にこだわった理由を聞かせてください。

有資格者によるサービスって、保険外看護だと1時間5,000〜8,000円になることも多く、なかなか気軽には頼めない価格帯なんですよね。一方で無資格のボランティアはたくさんありますが、その間がない。1時間1,000〜2,000円くらい(看護師がパートやバイトをする場合の時給は、札幌では1,500円前後であるため、有資格者視点でも安すぎるわけではない)の有償ボランティアという形にすることで、本当に必要な方が使いやすくなると思っています。

それと、報酬は必ずしもお金じゃなくていいんです。「MISIAのライブのチケットを用意するから一緒に来てください」「雪まつりに一緒に行ってほしい、ランチをごちそうします」みたいな事例も実際にありました。お互いが合意すれば、それが報酬になります。

——登録してから実際にサポートが行われるまで、どんな流れになっていますか?

有資格者の方は、身分証と資格証の写真を添付して登録してもらいます。必ずZOOMで禁止事項や注意事項の説明をした上で本登録完了です。

サポートを必要とする個人の方は身分証を添付して登録で、月額220円のプラットフォーム利用料をいただいています(入金確認後に本登録完了)。ご本人以外にも、障害のあるお子さんのお母さんや、高齢の親を持つご家族なども登録できます。

登録後は「リクエスト掲示板」があって、サポートしてほしい方が「この日の何時に、こういうことを、この報酬でお願いしたい」と投稿します。その掲示板は有資格者側のページにしか表示されないので、「これなら自分にできる」と思った有資格者が挙手ボタンを押す。そうすると投稿した人と挙手した人だけのチャットが開いて、具体的なやりとりが始まります。その後のやりとりには私たちは介入しませんし、手数料もいただいていません。

——現在の登録状況を教えてください。

有資格者は160名近くいます。看護職(看護師・保健師・助産師・准看護師)が約7割で、理学療法士・作業療法士・介護福祉士・社会福祉士、そして言語聴覚士が続いています。

サポートを必要とする側の登録者は現在約30名です。有資格者に比べるとまだ少なくて、情報をもっと届けたいというのが今一番の課題です。

——登録している有資格者の方々に、何か共通した思いはありますか?

登録の理由を聞くと、「制度の中ではここまでしかできない、でも気持ちとしてはもっとやってあげたい。歯がゆかった。」「何か役立てることがあるならと思って登録した。」という方がほとんどなんです。自分のこれまでの経験や知識で誰かの日常に役立ちたい、という思いを持った方たちが集まってくれています。

——実際にどんな依頼が来ていますか?

医療的な支援よりも、日常の場面に関わるものが多いです。医療的ケアのある子どもときょうだいの遊び相手、主な介護者が少し出かける間だけ一緒にいてほしい、他市から札幌に定期受診する際の1泊中の身支度サポートなどです。

最近増えているのが、グレーゾーンや軽度の発達障害のある子の登校付き添いです。放課後等デイサービスが終わって親が帰宅するまでの30分〜1時間、家で一緒にいてほしいという問い合わせも増えています。制度では対応できない「すきま」がまさにここにあるんですよね。

あと、難病のある方が「夫と一緒にデイキャンプに行きたい」というリクエストに、「よく家族でアウトドアをしているのでぜひ!子どもと夫も連れて行っていいですか?」という看護師さんが手を挙げて、「むしろ大歓迎です!」と今それが実現しそうです。お子さんたちにも、いろんな人がいるということ、助け合いながら生きていくということを体感してほしいという思いで参加してくれてます。そういうケースが生まれるのが、「さぽんて」らしいなと思っています。

——利用する側から、何か戸惑いの声が届くこともありますか? 

「ヘルパーさんに頼むようなことまでお願いしていいんですか?」と聞かれることがあるんですけど、むしろそういうことをやりたくて登録している人たちなので、何でも大丈夫ですとお伝えしています。一緒に部屋を片付けるとか、散歩に付き添うとか、ただそこにいるとか、それで十分な場面がたくさんあります。「専門職として何かをしなければ」という気負いは、ここでは必要ないんです。

——登録している有資格者からは、どんな声が届いていますか? 

誰かの役に立てるということはもちろんですが、アンケートを取ると「普段関わることのない分野を知れた」「医療職だけど介護や福祉を体感できた」という声が多いんです。医療・介護・福祉は制度的には縦割りになりがちなので、横断的に経験できる場がなかなかないんですよね。「さぽんて」を通じて、普段の職場に持ち帰れる視野が広がるという部分も、大切にしてもらえていると感じています。

——最後に、これから「さぽんて」をどう育てていきたいか聞かせてください。

まず、サポートを本当に必要としている方々にもっと情報を届けたいです。「こういうのがほしかった」という方が絶対いると思います。

そしてもう少し先の話をすると、今の働き盛りの人たちが自分自身のサポートが必要になる時代に、どういう社会になっているかをつくるのは私たち世代だと思います。制度だけに頼るのではなく、人と人が補い合える仕組みをみんなで一緒に作っていけたらいいなと思っています。「さぽんて」がその一助になれたら嬉しいです。


「さぽんて」では現在、サポートする有資格メンバー(さぽメン)・サポートを必要としている個人(リクさぽ)や法人さまの登録を歓迎しています。「こんな頼み方でもいいの?」と思うようなことも、ぜひ一度「さぽんて」のページをのぞいてみてください。

詳細・登録は「さぽんて」へ。