ウェルフェス2026 開催報告・「from Me」体験レポート:私(me)から私たち(we)へ広がるウェルビーイングの社会循環

2026年5月24日に開催された「ウェルフェス2026」。

様々な福祉にまつわる社会課題解決やウェルビーイングをテーマにしたブースが並ぶなか、一参加者として非常に深く心に残るワークショップを体験してきました。

それは、北海道札幌市を拠点に「対話による学びと協働」をデザインされている「ワークショップデザインdescribe with」さんが担当した、カードゲーム「from Me(フロムミー)」の体験セッションです。

今回は、このワークショップを実際に体験した参加者の視点から、当日の熱気あふれる様子と、一緒にプレイした皆さんの間で交わされたリアルな気づきの対話をレポートとしてお届けします。

「from Me(フロムミー)」とは

「ウェルビーイング」や「社会貢献」という言葉は、普段の生活のなかでは少し大きくて遠いテーマに感じられるかもしれません。
しかしこのゲームは、日々の小さなお金の使い方や行動の選択が、巡り巡って自分自身と社会全体を同時に豊かにしていくという「社会のつながり」を、誰もが直感的に体感できるよう設計されています。
公式ページ

1. 主催組織 describe with さんが大切にしていること

ワークショップを企画・進行してくださった「ワークショップデザイン describe with」さんは、自治体や企業の研修、主権者教育、サステナビリティの推進など、多様な現場で「対話の場」をコーディネートしています。

SDGs、脱炭素、防災、そして「寄付」といった、複雑で抽象的になりがちな社会課題をシミュレーションゲームを通して紐解き、参加者が「世界はつながっているんだ」「一人ひとりのアクションには意味があるんだ」という深い納得感を持てる場づくりを大切にされています。
今回の「from Me」にも、まさに「個人の幸せと社会の循環」を自分事として捉えてほしいという、同社の温かい理念が息づいていました。

2. カードゲーム「from Me」の概要と仕組み

「from Me」は、「生きがい・働きがい」と「社会のつながり」をカードゲームによってシミュレーションし、企業の社会的責任(CSR)やNPO活動、長期的には寄付の連鎖がどう生まれるかを体感できるプログラムです。今回のセッションでは、ゲームのプレイから振り返りまで、約50分間のなかに濃密な学びが凝縮されていました。

  • 対象者: 中学生・高校生から、ビジネスパーソン、地域住民、NPO関係者まで、幅広い層に対応。
  • ゲームを構成する指標(個人と社会の連動):
    各プレイヤーの手元には、自身の目標が書かれた「プレイヤーカード」のほか、「お金(資産)」と個人の幸福度を示す「ウェルビーイングポイントカード」が配られます。同時に、会場のホワイトボードなど、場全体には、社会全体の状況(経済・社会・環境)を示す「状況メーター」が掲示されます。
  • 3つのお金の使い方: 手元のアクションカードの結果が書かれているリザルトカードは、真ん中のハートのマークによって3つの色(性質)に分類されています。
    • 赤(ピンク): 買い物や食事などの「消費」
    • 青: 将来の発展や事業のために託す「投資」
    • 緑: 社会課題解決や他者への支援を行う「寄付」

プレイヤーは自分に課された個人のゴール(お金やウェルビーイングポイントの条件)の達成を目指しますが、社会全体の状況メーターが発展することで、巡り巡って自分にリターンが返ってくるという、リアルな社会の循環構造が取り入れられています。

3. ワークショップ体験 参加者のリアルな気づきと対話

ゲーム終了後、テーブルごとに行われた振り返りでは、それぞれのプレイスタイルの違いから、現実の社会構造を映し出すような面白い気づきが語られました。

Aさん:「ゴール条件の勘違いと、環境メーターの意味」

Aさんは、ゲーム終盤になって初めて全体の構造に気づいたという驚きを語ってくださいました。 「最初は自分のゴールしか見えず目標がよく分からなくて、他の方が何を大切にしているかも最後まで手探りでした。最後の最後になって、達成するゴールが2つあることや、自分と他人では条件が違うことに気づいたんです。私はウェルビーイングポイント自体は達成していたのですが、『環境メーターを上げることで社会を良くしたい』という自分のゴール条件(メーターの数値や必要枚数など)の本当の意味が、最後にようやく腑に落ちました。本当に楽しく、深く考えさせられるゲームですね」

Bさん:「自己資産の拡大と、投資・還元のバランス」

Bさんは、手元の資金が少ない初期段階における運用と、社会へ還元することのバランスの難しさを振り返ってくださいました。 「自分の豊かさだけを求めていると転落してしまうという、難しさを強く感じました。最初は持ちカードの資産が100や500程度しかなかったため、『まずは自分の資産を増やさないと社会のために使っていけない』と考えてしまったんです。最初の局面でマイナスが出たこともあり、つい手元の数字にばかり目が向いてしまいました。今思えば、もっと最極端なくらい大胆に投資をして、早い段階から社会に還元していくべきだったなと痛感しています」

Cさん:「環境の健康が、巡り巡って自分のウェルビーイングになる実感」

Cさんは、一見バラバラに見える「環境活動」と「個人の幸福」が、裏でどうつながっているかを体感されたと言います。 「最初は、カーボンニュートラルなどの環境活動をしても自分のウェルビーイングポイントが直接増えなかったので、『ウェルビーイングの中に社会(環境)は含まれないのかな?』と、そのつながりを難しく感じていました。しかしゲームが進むと、環境メーターが上がったことが巡り巡って自分に返ってきたんです。直接のポイントにならなくても、環境が良くなったおかげで最後はゴールできた。『自分の健康を保つには環境を良くしなければいけない』という、まさにウェルビーイングの本質をゲームで体感できました」

Dさん:「身近な選択が、いつの間にか社会貢献に繋がっていた」

Dさんは、社会貢献を意識せずとも、身近な利他行動が社会を豊かにするプロセスに感銘を受けていました。「 私は割と自己完結していて、まずは自分のできる範囲、お金のある範囲でコツコツ進めていたんです。社会のためにと力んでいたわけではないのですが、結果的にだいぶ社会に貢献できていました。しようと思ってしたというより『いつの間にか貢献できていた』という感覚です。例えば『自分の家庭だけではなく、他の家庭の子供たちのためにも』といった身近な視点で動いてみたら、それが社会に繋がっていました。サンゴや森林の保全活動が、巡り巡って綺麗な水や空気になり、自分たちの健康や資産という源流に直結しているという構造も非常によく分かりました」

このほかにも、お金が足りない時に他プレイヤーから資金を託された経験から『応援し合う投資や株式会社の根本的な温かさを疑似体験できた』という声や、カードの役割を周囲と早く共有して連携すればよかったという組織協働への気づきも上がっていました。 

4. 主語を「me(私)」から「we(私たち)」へ変革する、これからの時代のお金の使い方

体験後のレクチャーにおいて、ファシリテーターからは、これからの時代を生きる私たちに必要な「お金のバランス」と「ウェルビーイング」の知見が共有されました。

私たちは日常生活において「使う(消費)」「貯める(貯蓄)」という行為に馴染み深いですが、これらは主語が「me(私が使う)」に閉じがちです。しかし、未来のために生かす使い方である「譲る(寄付)」や「増やす(投資)」のアクションを取り入れることで、私たちの思考の主語は自然と「we(私たちのために)」へと変容していきます。

他者のためにお金や資源を使うことで、巡り巡って自分自身の幸福感(ウェルビーイング)が高まることは、近年の幸福学のエビデンスによって証明されています。

また、幸せを構成する要素として提示された「4つの因子」(目標を持ってアクションを起こす「やってみよう因子」、周囲とのつながりや感謝を大切にする「ありがとう因子」、物事を前向きに捉える「なんとかなる因子」、自分らしさを表現する「ありのまま因子」)は、本ゲームのプロセスそのものでした。参加者が対話を通じてこれらを再確認できたこと自体も、とても価値ある振り返りでした。

5. 結びにかえて:一滴の水滴が紡ぐ、確かな社会変革

「一人ひとりの行動は一滴の水滴のように小さいかもしれない。しかし、決して無力ではない」

この言葉が示す通り、ワークショップでは個人の小さな行動が積み重なることで社会全体のメーターが目に見えて向上し、さらにNPOや専門機関の力を借りることで、社会課題の解決が一気に加速する様子がリアルに可視化されていました。

本プログラムの最も素晴らしい設計は、その体験がワークショップ内だけで完結しない点にありました。当日の参加費の全額が、そのまま主催団体(ウェルフェス2026主催:NPO法人あえりあ・一般社団法人fanfare)の活動資金として寄付される仕組みになっていたのです。
NPO法人あえりあ理事 小林が、代表して目録を受け取りました。

目録を受け取ったNPO法人あえりあ理事の小林

ゲーム内で学んだ「寄付や利他の循環」が、会場を出る瞬間に「現実の社会変革(実体験)」へとシームレスに直結するこの試みは、参加者に気づきと納得感をもたらしました。

私たち一人ひとりが、日々の生活の中で「収入の1%の寄付」に目を向けてみること、あるいは「古着を譲る」といった0円からできる身近な利他行動を選択してみること。そうした小さな「from Me(私から)」の積み重ねこそが、持続可能で幸福な「from We(私たち)」の社会を築く確かな礎になると確信できる、誠実で意義深いワークショップでした。

素晴らしい学びの場をデザインしてくださったdescribe with様、そして共に社会を創り上げた参加者の皆さま、本当にありがとうございました。

WELFES ウェルフェス2026 

🗓 2026年5月24日(日)11:00〜17:00 

📍 エア・ウォーターの森(札幌)

 Instagram:@well_fes_

主催

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取材者

名久井里美(なくいさとみ):理学療法士兼キャリアコンサルタント・ライター

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