2026年5月24日(日)、札幌エア・ウォーターの森にて開催された「ウェルフェス2026」。
福祉の現場から生まれた想いと可能性が交差したこの日、会場にはたくさんの出展者が集まりました。
それぞれのブースでは、サービスや活動への熱い想いが語られました。
インタビューを通じて届いた、出展者それぞれの声をお届けします。
MUN’S DOUGHNUT


「誰も排除されないお店をつくる」——そのコンセプトを掲げ、札幌市手稲区を拠点に活動するのがMUN’S DOUGHTNUTです。「誰も排除されない社会」の実現を本気で目指したとき、その第一歩として選んだのが、地域に根ざしたドーナツ屋さんという場でした。
特徴的なのは、スタッフとの関わり方です。有償ボランティアという形で幅広く仲間を募ったところ、障がいのある方も応じてくださったといいます。ヘルパーさんと一緒に来店したり、その日の状態に合わせて福祉サービスを柔軟に組み合わせながら働く。そんな「新しい形」への挑戦が続いています。「社会参加の選択肢が少ないスタッフも多い。彼女たちや彼らと一緒に成長していきたい」という言葉が、この店の根幹にあります。
今回の「ウェルフェス2026」では、8種類のドーナツがお昼過ぎには当日中に完売。一番人気はシンプルなバターミルクドーナツです。福祉関係者だけでなく、地域に暮らすすべての人に「ともに働くことが当たり前の社会」を日常から伝え続けています。
やさいのおやつ ブルーブロッサム


「もったいないを、おいしさに。」——そのキャッチコピーのとおり、ブルーブロッサムは、農家さんから直接「規格外野菜」を購入し、美味しいお菓子として届けるパウンドケーキ専門店です。北海道産の野菜をたっぷり使ったしっとりパウンドケーキとラスクを中心に、常時8種類のラインナップを揃えています。どれがおすすめかと問われると「全てにおいてできるだけ偏りなく」と答えるほど、一つひとつに等しく丁寧な想いが込められています。
創業のきっかけは、「娘と一緒に起業したい」という想いでした。社会に出るためにサポートが必要な子どもたちのそばにいたいという親心がお店の原点にあり、その歩みの中で福祉の世界とも自然につながっていきました。野菜を使ったお菓子をお子さんのいるご家庭に届けたいという想いを持ちながら、「幅広くいろんな方に届けられたら」という言葉が示すように、ブルーブロッサムのおいしさはすべての人へ開かれています。
今回の「ウェルフェス2026」では商品が当日中に完売。その温かい反響が、また次への一歩を後押ししています。
スープのクレヨン & ユーモアプロジェクト


日常的に医療的ケアが必要だったり、手術があって生きられるといった医療依存度の高い子どもたちの医療の今日と未来をつくるため、あらゆるチャレンジを続けているのが「ユーモアプロジェクト」です。「豊かさとは心がたくさん動くこと」と定義し、医療者育成から啓発活動、そして命がつながった後の方々が社会とともに豊かに生きることのサポートまで、幅広い活動を展開しています。
その挑戦の一つが、就労支援事業所さんとのコラボレーションによる販路開拓・ブランディング・製品開発・企業マッチングを軸にした「ユーモアプロジェクト」の取り組みです。その象徴的なプロダクトが「スープのクレヨン」。病気や障がいのある方でも、大切な人と同じものを食べて「美味しいね」と言える瞬間を届けたいという願いから生まれました。小樽の就労支援事業所と連携して開発されており、現在はANAの機内でも採用されるコーヒー焙煎品なども展開しながら、ラインナップを広げています。
「スープはあくまで手段のひとつ。本当は空気を変えたい」——多様性を”義務”や”我慢”としてではなく、お互いの豊かさのために実践するという姿勢がこの活動の核心です。自分と違う存在を”面白がれる心の余白”、それがユーモアという言葉に込められた願いです。
tomoni art


社会福祉法人ともに福祉会(札幌市西区発寒)が運営するアートグッズブランド「tomoni art」。2003年より週1回の創作活動を続けてきた作家さんたちの、「直接心に語りかけてくるアート」を届けることを大切にしています。
一般の雑貨店に並べてもらえるような商品づくりをスタート地点に据え、原画をもとにデザインしたグッズや、紙・布に直接描いた一点ものの商品を、スタッフとメンバーが一緒に製作。北海道内はもちろん全国の雑貨店でも取り扱われています。普段は一般のマルシェや個人作家が集うイベントへの出展を中心に活動しており、「つくる人と手に取った人がともにハッピーになるものづくり」という軸は、どの場でもぶれることがありません。
グッズ化のプロセスにもこだわりがあります。「カレンダーの主役にはなりにくい作品でも、余白に散りばめれば脇役として生きてくる」そんなふうに、それぞれの作品の個性を最大限に引き出す工夫を続けています。候補作品を並べると作家さんたちがそわそわしながら「自分のが選ばれるかな」と待つ姿があるといいます。商品が完成すると必ず作家本人に現物を届けており、それが自信や表現意欲につながっています。「前はあまり言葉で発しなかったのに、一言言えるようになった」という変化も生まれているそうです。作家さんの個性を通じて障がいへの理解につなげていきたい——その静かで力強い信念が、tomoni artの根底に流れています。
日本理化学工業株式会社


日本理化学工業株式会社は、1937年(昭和12年)創業の文具メーカーで、全従業員の約7割が知的障がいのある社員という、日本でも先駆的な取り組みを70年以上にわたり続けている企業です。ダストレスチョーク・黒板消し、そして「キットパス」を製造・販売しています。「人にやさしく、地球にやさしい」を経営の基本姿勢に掲げ、「みんなの幸せが私の幸せとなる」という理念のもと、誰もが力を発揮できる「皆働社会」を体現し続けています。
代表商品のキットパスは、窓ガラスやホワイトボードなどのつるつるした面に鮮やかに描けて、水拭きで簡単に消せる固形の描画材です。お米由来のライスワックスを原料とした安全設計で、水で溶かせば水彩画に、指でぼかせばパステルアートにも変化します。子どものお絵かきからプロのアーティストの表現ツールまで、年齢も障がいのあるなしも関係なく、すべての人が「描く楽しさ」を分かち合えることを大切にしています。
今回の「ウェルフェス2026」では来場した子どもたちがキットパスを手に夢中になってお絵かきする姿が会場を彩りました。「絵心がないから」という大人の壁を取り払い、ただ自由に色をのせる喜びを取り戻してほしい——「楽がき文化」を日本から世界へ広げるその挑戦は、ボーダーラインを越えてつながる社会を、一本の画材から描き続けています。
就労継続支援事業所 ぷりもぱっそ


「ぷりもぱっそ」は、小樽市築港の済生会小樽病院内を拠点とする就労継続支援B型の事業所です。利用者の方々が自分らしいペースで働き、社会とのつながりを育んでいける場を大切にしています。済生会小樽病院や商業施設ウイングベイ小樽での作業を中心に活動しながら、近年は3Dプリンターを活用したものづくりにも積極的に取り組んでいます。
今回の「ウェルフェス2026」では、3Dプリンターで制作した海の生き物を缶の中に詰めて自分だけの世界をつくる「水族”缶”ワークショップ」を出展。子どもから大人まで目を引くそのアイデアは、「B型事業所でもこんなにクリエイティブなことができる」という新たな可能性を、来場者に鮮やかに伝えました。
ものづくりや創作に関心のある方に、ぜひこの活動を知ってほしい——利用者一人ひとりが新しいスキルと出会い、自信を積み重ねていける場をつくること。ぷりもぱっその挑戦は、就労支援の常識を更新しながら、今日も続いています。
知育玩具 ジナゾル


「ジナゾル」は、障がいのあるお子さんを持つ母親が、わが子のために一から作り上げた知育玩具です。子どもと一緒に文字を学ぶ時間を、勉強という義務感ではなく、親子で笑い合える豊かな時間に変えたい——そのシンプルで力強い願いが、この商品の出発点です。今回の「ウェルフェス2026」ではアイデアピッチコンテスト「EXITE」でもベストプラクティス賞に選出されるなど、その取り組みへの評価がさらに広がっています。
商品化への道のりは決して平坦ではありませんでした。職人さんとの製造工程のすり合わせ、権利取得の壁、そして育児との両立——「子どもから目を離さず、きちんと育児も全うする」という強い意志を持ちながら、福祉や支援者のサポートに支えられ、一つひとつの壁を乗り越えてきました。名古屋から札幌へ飛行機で駆けつけた今回の出展にも、その行動力と熱意があふれていました。
「障がいのある子を持つ家族は、影の存在ではない。人生を前向きに切り開き、社会に貢献しようとしている方がたくさんいる」——その姿をもっと多くの人に知ってほしい。ジナゾルが全国へ広がり、その売上が障がいのある方々の雇用創出につながっていくことを、力強く描いています。
Lovin’ Life


「Lovin’ Life」は、視線入力技術を活用したコミュニケーション機器の販売・サポートを手がけています。体が動かず声も出せない方が、目の動きだけで文字盤を操作して意思を伝えられる——そんな機器を、主にALS・筋ジストロフィーなどの患者さんへ届けています。道内でもこの種の機器を扱う事業者は非常に少なく、その貴重な一社として、北海道全域の困っている方々のもとへ届け続けています。
特筆すべきは、遠隔操作によるアフターサポートの充実ぶりです。広大な北海道では、地方在住の利用者の端末を事務所から直接操作し、画面設定や文字サイズ変更など細やかなサポートを行っています。「アフターサポートを一番重視している」という言葉通り、機器を届けた後もしっかりと寄り添う姿勢が、現場からの揺るぎない信頼を生んでいます。機器を導入した患者さんから「希望の光です」と言われる瞬間が、何よりの原動力だといいます。
今回の「ウェルフェス2026」では、視線でボールを動かすパラスポーツ「ボッチャ」の体験コーナーを出展。「こういう機器があることを知らない患者さんや医療関係者がまだ多い」として、特に相談員や医療スタッフへの認知を広げたいという想いを持って参加しました。一人の支援者が知ることで、その病院全体を通じて必要な方へつながっていく——そんな連鎖を、この日から生み出したいと願っています。
超高齢社会体験ゲーム ~コミュニティ・コーピング~


「コミュニティ・コーピング」は、みんなで力を合わせながら地域の高齢化問題に向き合う、体験型のボードゲームです。東日本大震災をきっかけに開発されたこのゲームの名前にある「コーピング(Coping)」とは「問題を整理・処方すること」を意味します。さまざまな立場の人がつながることで地域課題を乗り越えていく過程を、ゲームという形で体感できます。
対象は高校生以上で、4〜6名がベストな人数。ゲームをクリアすることより、終了後の振り返りグループワークこそが核心です。「もしこれが現実だったら、明日の自分には何ができるだろう?」という問いが、日常の中での行動変容のきっかけを引き出します。地域包括支援センターのスタッフや行政職員、学校からの依頼でも広く活用されており、地域課題と向き合うあらゆる立場の人に届いています。
今回の「ウェルフェス2026」を通じて目指したのは、このゲームをもっと多くの人に知ってもらうこと。地域で何かを始めたい人、すでに現場で課題と向き合っている方、そして普通に地域で暮らす市民——誰でも参加できるこのゲームを、もっとたくさんの場所へ届けたいという熱い想いを胸に、この日を迎えました。
チャレンジドジム


「チャレンジドジム」は、脳卒中や事故などによって高次脳機能障害・失語症を抱えることになった方を対象に、退院後のリハビリと社会復帰を支援するフィットネス施設です。記憶・注意・言語などの機能に障害が生じた方が退院後も継続してリハビリに取り組める場は、現在の日本ではまだ非常に限られています。特に65歳未満の「働き盛り」の方については、介護保険よりも障害福祉サービスが適切なケースも多いにもかかわらず、病院やケアマネージャーがその制度を十分に把握していないことも課題となっています。
今回の「ウェルフェス2026」では「高次脳機能障害体験コーナー」を設置し、医療従事者や一般来場者が当事者の感覚をリアルに体験できるコンテンツを提供。医療職の方でも「改めて大変さを実感した」という声があがる一方、「失語症って手話で伝わるの?」という反応に象徴されるように、まだまだ認知が広がっていないこの障害について、体験を通じて知ってもらう貴重な場となりました。
病院と介護・福祉のあいだに存在する「縦割り」の壁を崩し、「もう一度働きたい」「社会に出たい」という気持ちを持つ方が、適切な支援へ確実にたどり着けるように。全国でもまだ200カ所にも満たないこの分野の受け皿を、北海道から、そして日本全国へ増やしていくことを、チャレンジドジムは情熱を持って目指しています。
WELFES ウェルフェス2026
🗓 2026年5月24日(日)11:00〜17:00
📍 エア・ウォーターの森(札幌)
Instagram:@well_fes_
主催
- 一般社団法人fanfare
@fanfare.hokkaidou
https://www.fanfare-sapporo.com/ - NPO法人あえりあ
@saponte_aeria
https://aeria-hp.com/
お問い合わせ
- NPO法人あえりあ:contact@aeria-npo.org
- 一般社団法人fanfare:fanfare615@gmail.com
取材者
名久井里美(なくいさとみ):理学療法士兼キャリアコンサルタント・ライター
写真撮影
株式会社クリエイティブ・クリニック
