NPO法人あえりあが運営する有償ボランティアのプラットフォーム「さぽんて」がスタートして、2026年で5年が経ちます。医療・介護・福祉の有資格者と、サポートを必要としている方々をつなぐこの仕組みは、どんな思いから生まれたのでしょうか。今回は代表の高橋亜由美さんに、「さぽんて」立ち上げまでの歩みと、その根っこにある価値観についてお話を伺いました。
——まず、あゆみさん自身のことを教えてください。看護師になったのはいつ頃ですか?
看護師になったのは2009年です。でも、その前の看護学生時代の経験がすごく大きかったんです。大学1年生から4年生まで、脳性麻痺の方の居宅ヘルパー(有償ボランティア)をしていました。家での介助はもちろん、一緒に映画館に行ったりもしました。
——学生のころからそういった活動をされていたんですね。
はい。その方とは、講演に同行したり映画館に行ったりもしました。私たちはその「生きたいように生きる」「生活したいように生活する」を側で支える役割だったんです。働き始めると医療職から医療職への教育が始まりますよね。でも学生時代に、その方から直接話を聞きながら、その方に合わせて動く経験をさせてもらったので、「看護師だからできる」ではなく、「誰でもできるお手伝いがたくさんある」ということを体感させてもらったんだと思います。車椅子を押して映画館に行くって、資格は関係ないですよね。
——看護師になることは、ずっと目標にされていたんですか?
実は、もともとは北大の薬学部を志望していたんです。でも模試の結果が思わしくなくて、浪人や私大進学を考えるよりも「北大で大学生活を送りたい!楽しそう!」という気持ちが強かったので、医学部保健学科の放射線技術科学専攻と看護学専攻に出願し、看護に合格しました。
今になって思えば、あの選択があったから今があるんですよね。人生ってわからないなあと思います(笑)。
——医療や福祉の世界に興味を持ったのは、いつ頃からだったんでしょう?
幼稚園のときのことが今でも記憶に残っています。私が通っていた幼稚園に、脳に障害のある子が同じクラスにいました。徒競走の時はその子だけバギーを5漕ぎしたらゴールとか、冬のお散歩はそりに乗せてみんなで引っ張るとか、そういう時間がごく自然にある環境でした。
すごく覚えているのが、みんなで紙芝居を見るとき、その子のバギーがそっぽを向いたままで誰も気づかなかったんです。一人の男の子が途中で気付いてバギーの向きを変えたら、先生にクラス全員が叱られました。「みんなで楽しむ時間なのに、その子の向きがずっと違ったのに誰も気づかなかった」と。障害とか健常とかの概念がない時期に受けた教えが、ずっと自分の中に残っているんだと思います。
——看護師になってからの経歴を教えてください。
大学病院のICUに配属されて、5年間でリーダーまでやりました。その後は、介護施設や大学のインストラクターなど派遣で行ってみたり、透析クリニック、訪問看護、人工呼吸器特化の病院といろんな職場を経験しました。今も重症心身障害児のデイサービスで働いています。
——いろんな現場を経験されてきたんですね。学生時代の「生きたいように生きる人を支える」という感覚は、働いてからも変わらずあったんですか?
そうですね。急性期の現場にいると、「この人は本当はどうしたいんだろう」「その前に何かできることはなかったのかな」とすごく考えるようになっていきました。集中治療はもちろん必要ですが、私自身がずっとそこで働き続けたいかというと、少し違うかもと感じ始めていたんです。
その後派遣に登録し、いろんな職場を経験するうちに、ダブルワークしている人、応援ナースで全国を回っている人、いろんな働き方の人に出会いました。「看護師って、こんなに自由でいいんだ」ということを教えてもらった気がします。
——働き方の幅が広がりながら、職場の外でも動いていたんですよね。
はい。パーソナルアシスタント制度で、人工呼吸器をつけて一人暮らしをする方の介助者もしていました。気管切開をしている子が小学校に通うのに親が付き添えなくなったとき、看護師の友人・知人20人くらいでLINEグループを組んで、週1〜2回誰かが学校に付き添うチームのリーダーをしていたこともあります。
——自分一人でやるのではなく、自然と仲間を集めていたんですね。
そうなんです。こういうことを周りに話すと、「月1〜2回ならやりたい」「子連れでもいいなら家でのお手伝いができる」「本当はそういうことがやりたかったんだよね」と言ってくれる人がすごく多かったんです。一方で、手を必要としている方がたくさんいることも現場でわかっていた。この両者が繋がれば良いんじゃないかって思ったのが、「さぽんて」を考えたきっかけです。
——「さぽんて」を自分で立ち上げようと決意するまでには、何かきっかけがあったんですか?
最初は「お金も人員も技術もある人が実現してくれたらいいな」という気持ちでした(笑)。でも、そういう力のある営利企業に話を持っていくと、どうしても「利益をどう出すか」「もっと単価を上げるべき」という話になっていく。そうなると本当に必要な人に届かないものになってしまうと感じました。
そんなとき、仲の良い友人に「自分でやればいいじゃん」とさらっと言われたんです。その子は一般企業の人なんですが、次に会ったとき絶対「あれどうなった?」って聞いてくる人(笑)。言うだけ言って何もしていない自分になっているのが嫌すぎて、それが背中を押してくれました。
もう一つは、勤務先のNPO法人の代表にこの構想をプレゼンしたとき、「ここまでビジョンと具体が揃っているなら、自分で立ち上げた方がいい。あゆみさんならできる」と言ってもらえたこと。四人のお子さんを育てながら、上の二人が障害児で、自らNPO法人を立ち上げてデイサービスを運営している方に言ってもらえた言葉は、本当に力になりました。
——2021年のコロナ禍での設立でしたね。
コロナ禍で外に出られない時間ができたことで、具体的に考える時間が生まれたんです。Clubhouseという音声SNSが流行った時期に毎日この構想を話していたら、そこでも応援してくれる人がどんどん集まってきてくれました。2021年1月に自分でNPO法人を立ち上げることを決意し、6月にクラウドファンディング、7月にNPO法人あえりあ設立、8月に「さぽんて」スタートです。気づいたら退路がなくなっていた(笑)。こんなに応援してくれる人がいるんだから、前に進むしかない、という感じでした。
後編では、「さぽんて」の仕組みや実際の活用事例、今後について詳しくお伝えします。
